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1時間でよくわかる TPPを考える <石田信隆>

■1時間でよくわかる TPPを考える <石田信隆> 家の光協会 20110226

 WTOやFTAと比べても、TPPは無条件の関税撤廃をかかげ、関税以外の投資なども自由化しなければならない。「徹底した自由化」である。FTAやらEPA、WTOの交渉では、なんとかコメなどの主要農産物の自由化の程度を阻もうと時間をかけて交渉してきた。それらをすべて放り出して、「乗り遅れたら大変だ」と危機感をあおって突き進もうとしているのが今回の動きだという。
 自由化の流れがあることの是非の前に、従来積み上げてきた過程さえふっとばしてしまう乱暴な論議であることが、よくわかる。そしてそれは、アメリカ抜きのアジアの連携を阻むためのアメリカの戦略であるという。

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▽17 アメリカは、一定の価格水準が保証される制度と、直接支払い制度を組み合わせて、農産物価格の水準にかかわらず、一定以上の水準の補助金が受給できるような農業保護をおこなっているから、低価格で農産物を輸出できる。EUも、輸出補助金、買い支えによる市場介入、直接支払いなどで、農家を手厚く保護している。生産量に結びつかない基準で支払われる直接支払いを「生産から切り離された」補助金だとして、WTO交渉でも削減は不要な補助金として認めさせた。
▽19 農水省のTPPの影響試算。コメと畜産への影響がきわめて大きい。
▽25 農業の多面的機能の損失額。農水省の試算では年間3兆7千億円。
▽27 2010年3月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」「規模拡大を図ろうとするだけでは、農業所得の確保につながらなかっただけでなく、生産現場において意欲ある多様な農業者を確保することもできず……」
▽27 韓国をTPP推進論者が注目。ガットウルグアイラウンドで市場開放への対応として、韓国は思い切った農政を展開。施設野菜などの輸出戦略品目の専門団地を育成するため、2兆9千億円を投入し、農漁村特別税をつくり、農漁村の振興のために使われた。……この積極策は、農産物の過剰生産と農家負債の急増をもたらす。強い農業を目指したのに借金漬けになってしまった。03年からFTAをすすめる。韓国がFTAに積極的なのは、韓国経済が貿易に依存する度合いがずば抜けているから。GDPに対する輸出額の割合は、日本は16・1%なのに対し、韓国は45・3%。
▽31 農産物輸出 09年の農林水産物の輸出は4454億円で、17年までに1兆円にする計画。それでも全体の2%弱。輸出で日本農業が救われることはない。
▽42 農水省の試算では、TPPによって、食料自給率はカロリーベースで14%まで低下する。米の生産は9割減り、新潟産コシヒカリや有機米などのこだわり米をのぞいて輸入米に置き換わる。
▽46 テンサイや麦は北海道の畑作で重要。サトウキビやパイナップルは沖縄農業を代表する。ジャガイモやサツマイモは北海道や鹿児島。酪農・牛肉・豚肉も、北海道や九州では基幹産業。〓北海道庁は独自にTPPのエイ居うを試算。北海道では、農業団体だけでなく、経済団体や消費者団体も共同してTPPに反対している。
▽56 FTA 日本はASEAN7カ国とメキシコ、チリ、スイス。韓国はASEAN全体とシンガポール、チリ、EFTA、インド。日本が立ち後れているわけではない。韓国の輸出の好調さは、FTA効果というより、ウォン安が大きい。韓国は米国やEUとFTAに合意したが、今後議会で批准しなければならない。韓国から輸入する自動車にかかる2・5%の関税は段階的に撤廃されるが、この程度は為替レートの変動の範囲内の問題では?
▽59 日本はアジア重視戦略を。TPP構想が急浮上したのは、アジア太平洋地域がアメリカ抜きでまとまることを避けようというアメリカの戦略。TPPには、中国・韓国・タイ・インドネシア・フィリピンなどは参加する意向はない。

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