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閉ざされた国ビルマ〈宇田有三〉

■閉ざされた国ビルマ〈宇田有三〉 高文研 201007
 内戦がつづくビルマに17年間通いつづける。
 熱帯の森のなかで軍政に抵抗するカレン民族に寄り添うが、年々弱体化する。本拠地も陥落する。ある意味封建的な組織を改革しようとせず、カレン民族の大義を考えるだけで人々の生活を考える余裕がなくなっていることがその一因だという。「カレンの今の戦闘のことを考えると、実は夜も眠ることができなくなることもある……いったいどうしたらいいのか」と現場司令官は悩んでいる。
 ビルマ国内ではいつも公安の目を意識しなければならない。反政府的な人に会うには、胃がひりつくような緊張感を覚える。子供が駆け回るごく普通の生活の部分部分に、そんな緊張感がチラチラと垣間見える。戦時体制下の日本もこんな雰囲気だったのかもしれない。
 軍政に対抗するカレン=正義、軍政=悪であるとしても、その枠で見るだけでは薄っぺらな報道になってしまう。欧米の価値観によってビルマを切るだけで、ビルマ人の価値観に寄り添っていないからだ。農民や辺境の少数民族を含めたビルマ人の思いに寄り添うことで、カレン指導者の弱さや悩みも浮き彫りになる。軍政をここまで強くしてしまったビルマの文化や土地のあり方をあぶりだす。軍政は悪だとしても、軍政をも含めた全体像がビルマの実像である、ということがよくわかる。
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 ▽33 民族の定義。……カレンを「その多数派はキリスト教徒」という説明は誤り。タイ国境で反軍政の立場をとり、流ちょうに英語をあやつり、キリスト教を信奉するカレン人に接触したにすぎない。
 ▽88 急勾配の山道や崖をよじのぼる強行軍で国内避難民を訪ねる。無線機も持たず、わずかな食料だけ。小さな布製カバンひとつだけで動く人。
 ▽160 デモ参加者は恐怖におののく。軍政は、衛星放送に流れた映像を録画し、デモ参加者を割り出している。

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