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流学日記<岩本悠>

■流学日記<岩本悠> 幻冬舎文庫 201008

 このまま流されて安穏と生きるだけでいいのか。20歳の筆者は焦る。飛び出すしかない。それが旅だ。ボランティアをしながら世界20カ国を巡る。ただの貧乏旅行では地元の生活と関係なくふわふわと浮遊して終わりがちだが、ボランティアという切り口があるから地に足がつく。大使館だろうとどこだろうと、いつも体当たりで飛び込む。
 なにより「自分」が躍動している。彼女を追いかけてニュージーランドまで行ったら、新しい男がいた。自分の限界を知ろうと200キロを走ろうと思いつく。50キロで走れなくなり、歩く。そして歩けなくなり、自分の弱さを実感する。
 その後また再生したように体当たりしはじめる……。この本の印税でアフガンに学校を建てる。
 「僕の将来を僕自身が楽しみだ」と公言する圧倒的な自信はさすがに私は経験したことがない。
 熱くなれる旅。熱くさせる旅。熱くなれる人生。熱くさせる人生。
 どこまで進めるか、どこで倒れるか。そんなことをいつも考えていたころを思い出す。
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▽31 水かけまつりのバンコック。音楽があれば踊る。酒をあおって、葉っぱを吸って……。
▽47 ダッカ 若い女性が立ちながら脱糞する風景。このショックから立ち直らなければ、女の子ともうセックスできないじゃないかと、本気で不安になる。
▽65 死を待つ人の家 毎日、死にゆく人たちを看取り、死体を運び出しては燃やし、空いたベッドの数だけ死にかけた人たちを道や駅から拾って帰る。……いったい何の意味があるんだろう。偽善 俗人 悟り。
▽99 父母と再会「親なんか泣かせてでも踏み越えていけ。おまえが親を踏み越えていくことこそ、一番の親孝行なんだからな」
▽111 レバノンのパレスチナ難民キャンプで、「イスラエルの女の子が一番かわいい」と言ったとたん、穏和だった青年の顔が憎悪にいっぺんした。
▽116 平和とはセキュリティーと解釈しえちたユダヤ人。共生や共存という意味があることに気づいてほしい。(〓足立君の平和のベクトルの話)
▽132 ピラミッドに登頂。やっちまった! 不法侵入。
▽152 ナイロビのスラムの水洗便所。どぶ川に捨てられた大量のコンドーム。
▽178 見たこと、会った人、やったことなど、目に見えるものはおもしろく伝えられても、そこで自分が何を感じ、何に気づき、何を考えたか、目に見えないモノを伝えられないのだ。……本当に大事なモノは目に見えない。目に見えない大事なモノを伝える術が欲しい。
▽186 善意で送った古着が、アフリカの繊維産業をつぶす可能性。
▽201 キリマンジャロ
▽217 55キロを超えた時点で走れなくなる。……歩く、歩く……
▽257 オトナの冷めた反応に比べて学生は、「こんなこと考えて行動してる人がいるのに、今の自分はどうなんだ」と真剣に考え込んでしまったり……熱くなる輩が多い。話を聞いても「他人事」にして今の自分に問いかけないオトナとはまったく違いますよ。「俺の若いとき」の情熱をとっくに失っちゃってるオッサンの愚痴が何の説得力もないわけです。やっぱ若者を一番動かすのは、同じ若い人の行動と熱い情熱ですよ。

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