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不屈のために <斎藤貴男>

 ちくま文庫 20060612

世の中なにかおかしい。
憲法改正や有事法制は怖い。
「防犯」という名の監視社会化も不気味だ。
派遣社員と本社員の賃金格差もひどすぎる。
暮らしていけない階層をつくる経済体制も露骨だ。
二世議員ばかりの国会はなんだ……
おかしいことだらけだ。
どこから手をつけていいかわからないほど。
で、萎縮して動かないままになってしまう。
敵の思うつぼだ。
おかしいぞ、ふざけるな、と言いつづけるしんどさよ。
なぜ筆者はこれほどまで怒りつづけることができるのか。
刺激を受けると同時に、正直深いため息もついてしまう。

------抜粋・要約--------

▽郵便局は、暮らし向きから人間関係、愛犬やマイカーの種類まで知りうる立場。郵便法は、業務上知り得た住民の情報をみだりに転用することを禁じている。「新サービス」が実現されなかったのはこのためだが……民営化によって……郵便物でわかる個人情報がマーケティングに流用されれば、通信の秘密もへったくれもない。
▽指紋情報を記録したICカードで、出国前の本人確認に役立てる。……顔認識システムの顔貌情報を入力した「e-パスポート」発行の計画も予算化。
▽監視カメラ「監視社会を拒否する会」
▽自動改札 人の移動歴、位置情報のデータを集める「関所」にかわりつつある。
▽個人情報保護法 営利目的でない個人やNPOまでもが規制の対象になっている。弁護士やNPOが、調査のため個人情報を集めただけでも、彼らのパソコンを押収できてしまう。
▽防衛庁が市区町村に、自衛官適齢者の住民基本台帳や健康情報、親の職業まで提出させていた問題を問われると、小泉首相はなんと「自衛隊に入りたい人もいるのだから、これも行政サービスの一環」と居直った。
▽城山三郎 規制と関係なしに書きたいことを書く。法律があるからといって引っ込んじゃったんじゃあ、絶対物書きとして悔いが残ります。物書きは絶えず打って出なければなりませんよ。
▽靖国神社と千鳥ヶ淵 これらの施設には問題が多いから、あらためて埋め直そうというわけでもないのに、なぜ再び新しい施設をつくる必要があるのか。それは国家のために新たな死者が予定されているためにほかあるまい。新しい戦没者追悼施設の計画が浮上してきたのは、90年代初め、国連平和維持活動への参加を決めた頃にまでさかのぼれるという。
▽広島大学 有事法制廃案を求める声明に参加したのは、第一線を退いた名誉教授ばかり。現役は、期待していた人数の半分も集まらなかったという。背景に大学「改革」がある。文部科学省の近年の大学政策は、選別の方向に急傾斜している。……当局ににらまれて不利な扱いを受けたくない気持ちが強すぎるあまり、自由な研究・言論活動にブレーキがかかっているのが実態なのだ。
▽朝日新聞は9.11の翌々日の「天声人語」で「よし、戦おうじゃないか」と書くまでに変貌し、日教組も教育基本法改正の動きに、むしろ積極的に服従しているありさまだ。そうした流れに乗れない記者や組合員は、すでに組織の内部で排除されつつある。
▽旧北海道拓殖銀行の特別背任事件では、3被告のずさんさを認めながら、刑事責任を問わず無罪とした(LDとの対比〓)、JOCの臨界事故をめぐる訴訟で、幹部ら6人の被告に対して、有罪判決は下したものの、執行猶予つきで、国の責任には一切ふれなかった。
権力や権力に連なるエリートは何をしても許される。一般国民が何事かを訴えたところで無駄である。逆にたとえばジャーナリズムがそのあたりの腐敗を追及したりすれば、そちらこそ(個人情報保護法違反の)罪人として扱うからそのつもりで--
▽アルゼンチン 新自由主義的改革をおこない、民間企業に無制限に近いフリーハンドを与えた。市場の暴走が社会を破壊し、人間の尊厳をぶち壊した。強盗の町に。
▽森永卓郎 日本の大企業は人事部がコントロールしていて、何の自由も与えられていないのに、結果責任だけ本人にとれというのは、野球でバントをしろとサインを出しておいて、あとで「ヒットを打ってない」というのと同じ事。(慣れない仕事に左遷して、それを「評価」する)
▽新聞社の記者は、上との関係や取材先との関係にばかり気を遣って、肝心なことを何も書かない。上に叱られたとしても、せいぜい左遷させられるだけ。それでも上に従うのは、その人の問題でしょう。……自分を守る最後の手段は、会社の外に自らセーフティネットを作っておくことしかない。

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