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道路をどうするか <五十嵐敬喜 小川明雄>

 岩波新書 1091101

 ▽15 1952年の新道路法は、田中角栄議員らが提出した。これによって道路建設の補助金制度を設けた。これが新たな中央集権の出発点。補助金ほしさに上京をくり返す年中行事はここからはじまった。
 ▽20 1953年提出の道路整備費の財源等に関する臨時措置法(特定財源の登場)。「5カ年計画」が急速に広がる。官僚だけで「計画」を策定し、国会の審議なしに閣議が決定するだけで、法律を同じような効力をもつから。
 ▽38 全国総合開発計画 国土審議会の審議を受けるが「御用機関」にすぎない。国会の関与がない。
 ▽96 「高速自動車国道」は、基本計画と整備計画を国幹会議にはからなければならない。が、「一般国道の自動車専用道路」は、はかる必要がなく、道路局長の決裁で着工できる。有料道路は「償還主義」だったのに、国が用地取得と工事の一部をおこない、公団が残りの工事と管理をする。採算確保がむずかしい高速道路を国の税金で大量に建設してしまう狙い。
 ▽100 「高速自動車国道に並行する一般国道自動車専用道路」国が直轄で施工する高速道路。後に高速自動車国道に編入できるようになっている。赤字まみれの公団では建設が困難だから。
 ▽112 国債残高。国際比較。歴代政府が建設国債を半額におさえていれば社会保障費を大幅に増額できた。
 ▽115 〓県道路財源の9割が借金返済へ、という記事。ほとんどが借金返済につかわれ、わずか78億円の自己資金で1035億円の道路事業をする。
 ▽118 道路特定財源が借金返済の道具に化している。松江市も、道路特定財源をすべて借金返済にあてても足りない〓
 ▽122 道路をつくるほど、借金が増えていく。「道路財源が危うい」となると、国県市が一体となって動く構造。道路事業の自己負担の大半を借金でまかない続けたことが、財政危機の大きな理由になっている。〓
 自治体は補助金に対応する財源を借金で賄ってきたが、それが限界に達し、「補助事業でここは可能だと国が言っても、地方団体のほうで断る場合というのはあちこちに出てきてる」
 ▽128 ありあまる道路特定財源を使うため、04年度には「まちづくり交付金」を導入。事業費の最大4割を補助する制度で、多くの自治体が飛びつく。細部にわたって注文がつけられないのも魅力。
 ▽135 OECD「ファクトブック」(英語版)GDPに占める社会保障支出、日本は最下位の米国とほぼ同じ。OECDの「対日経済審査報告書」によると「相対的貧困率」は米国とほぼ並んでいる。非正規と正規労働者の同一賃金や正規労働者の増加などの取り組みで是正するよう「勧告」している。
 ▽137 教育費も、GDPに対する公的支出の割合は、30カ国中28位。大学の私費負担も最悪。小学校の平均学級規模は韓国に次いで多い。教員の法定勤務時間の合計は17カ国でもっとも長い。
 ▽150 09年、福田内閣は道路特定財源廃止などの方針を閣議決定したが……
 ▽191 道路特定財源の一般財源化し、社会保障や教育、国と自治体の道路事業に。国主導の道路政策に地方をしばりつけてきた補助金制度を廃止。北海道開発局は道庁と合併。8つの地方整備局も縮小解体し、自治体と合併するか、霞ヶ関に引き揚げる。
 国会予算審議終了後の具体的な道路計画への資金配分を個別国会議員に示されてきた「箇所付け」も、一定額以上は予算審議の対象にする。
 ▽202 「費用便益分析マニュアル」コストとベネフィットを計算するB/C。計算方式が問題。自家用車のドライバーはすべて月収35万円の常用労働者として、道路整備によって短縮できた時間には業務目的の場合は1時間あたり2802円の便益があるとする。 業務以外でも2287円の便益と計算する。英国では非業務用では1時間500円としている。さらに、道路整備によって短縮された時間分は自家用車でもレンタカーとして貸し出すと計算して便益に参入(1時間あたり750円)。違法行為なのに。
 ▽208 全国一律の「道路構造令」。長野県栄村の高橋村長は、これを無視し、補助金に頼らない独自の整備事業をした。2分の1から3分の1の費用だった。〓
 ▽216 メディアも。全国紙の東京本社版に載らないと、官僚や政治家は目をつぶる。

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