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いい覚悟で生きる がん哲学外来から広がる言葉の処方箋<樋野興夫>

■いい覚悟で生きる がん哲学外来から広がる言葉の処方箋<樋野興夫>小学館 201802226

 がんで苦しんでる人でも、24時間忘れられず苦しんでいるわけではない。「心の宴会」を持つことで、苦しみや傷ついた気持ちを忘れる時間が増えていく。忘れられないまでも、おいしいものを食べて、おいしい酒を飲むとき、ちょっと離れていることができる。その一瞬の積み重ねが大事なのだ。
 患者や家族が必要とするのは、いかにして生きるかという「生きる基軸」だ。
人生に期待すると失望するけれど、人生から期待される存在という生き方に変わる気付きの瞬間がある。それは使命感の気づきであり、死ぬ瞬間まで自分を成長させることができるという学びでもある。
 死ぬ瞬間まで成長できる、という実感が得るにはどうしたらよいのか。
 これからの自分は人生から何を期待されているのかを謙虚な気持ちになって問うてみる。
 苦しみが消えることも、病気という問題が解決されることもないけれど、苦難を通してこそ気づく、自分の役割意識と使命感がある。使命感を見つけたならば、他者に関心を持ち、人と繋がることで人としての成長を続ける「いい覚悟」がめばえ、つきまとう苦悩を少しずつ忘れることができる。
 これまで自分のことを人生の8割考えていたのなら、それを4割にすれば、その分、他者について考える時間を増やすことができる。悩みを抱える自分自身のことを構わず、放っておく。その間、家族や医療スタッフに想いを馳せてみる。思いを寄せるだけでも気持ちがやわらぐ。
 「患者自身だけでなく、身近な人ががんになった時、自分がこれまでいかに生きてきたか、これからどう生きるのか、死ぬまでに何をなすべきかを真剣に考える、誰にとっても良い機会になるのです」

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・今この時間を大事に生きること、1日1日に自分の役割を見出すこと、それを怠って先のことを考え、不安になっても、明日すらないかもしれない。「明日から」となすべきことを先延ばしにせず、生きている限りは人として成長をして生きたいものです。
・泣きわめく子供をなだめるとき、愛で包み込むしかありません。砕けたる心の患者さんもそれと同じことなのです。
・「死ぬという大切な仕事」
・「断捨離」がブームになりましたが、病気の時こそ、身軽で調和のとれた人生に変えるチャンスです。それまでのやり方やこだわり、価値観を思い切って手放しましょう。
・「暇げな風貌と30秒の静思を」。集中力に欠けるときや、やるべきことが手につかない時、30秒間我慢してつづけてみてください。30秒つづけば、その先は楽になります。〓〓
・自分を直視するのではなく、「明日で世界が終わるとしても、今日りんごの木を植える」という生き方があります。
 悩みを抱える自分のことは放っておく。これまで自分のことを人生の8割考えていたのなら、それを4割にすれば、その分、他者について考える時間を増やすことができる。…自分自身のことを構わず、放っておく。その間、家族や医療スタッフに想いを馳せてみる。思いを寄せるだけでも気持ちがやわらぐはずです。人は最後まで使命感と共に生きる。
・闘病はマイナスな状況と甘んじることなく、自分を鍛えるチャンスと思ってほしい。がんは人間としての成長促進剤と考えてはどうでしょう。「人生は不連続の連続」
・偉大なるおせっかい症候群 暇げな風貌、偉大なるお節介、即効性と英断。いいことは相談せずに動くこと。
・自分よりも困っている人に積極的に関わっていると、必ずだれかが見ていてくれる。偉大なるお節介をすれば、必ず誰かが助けてくれる。同好の士と出会い、集まる場を持っていると人生は確実に豊かになる。
・尺取り虫になって歩みましょう。
 いたずらに遠くの先にある光を目指すのではなく、足元を照らす懐中電灯を持ち、確実に進むに等しい生き方。先のことを考えたら希望を失いがちな状況であればこそ、足元をしっかり見つめて今日という日を生きる知恵を学びましょう。
・病気で悩んでいる人は、往往にして限られた視界から世界を見て、それが世界のすべてだと考えてしまいがちです。「病人」という席に座ってそこから見える道を進んでいる。その視線をぐんと広げて、空から下界を見てみましょう。病人という境遇から離れて広い世界を見ることは、物事の本質を見極める視点を持つことです。それは自分自身を取り戻すきっかけになります。
・人間は、自分では希望のない状況だと思ったとしても、どう生きるかと深く考える学びの時が与えられています。がんになったことでそのことに気づき、気持ちに少し余裕を持てた時、人は初めて希望が持てるのです。
・「愉快に過激に品性を持って」 過激な人とは、実行力、行動力が伴う人という意味です。この3つを併せ持つ人は滅多にいません。人の規範になるような、そういう人を目指そう。
・逆境の日々があるから、それまで感じもしなかった些細なことに希望も生まれるし、知る喜びもある。…たいていの人は自分の弱さに翻弄されることがあって当然でしょう。だからこそ、現実の中にその人なりの、人間としての理想が問われるのです。理想とは、自分の役割や使命感だと思ってください。
・人生の目的は品性の完成だからね。
・困難、苦難はがんに限らず誰にでも襲いかかるものです。その時、いかに耐えるか。そして「人のためになる」ことにいかに気持ちを向けられるか。耐えることで品性が生まれ、品性を磨くことによって希望が生まれます。
・「後世へ遺すべきものは、お金、事業、思想もあるが、誰にでもできる最大遺物とは、勇ましい高尚なる生涯である」内村鑑三。
 どのような境遇にあっても善と希望と喜びのために生きる努力を続ける真面目な生涯そのものが「勇ましい高尚なる生涯」であり、後世への贈り物だというのです。
 死を前にしてもできること。それは、何かを世の中に贈りたいという思いと、かけがえのない人生を最後まで貫く小さな努力ではないでしょうか。
・がんになったせいで迷惑をかけていると自分を責める患者さんだからこそ、家族にたくさんの気づきを与えている。お互いの弱さや足りなさを補い合うことで、人間として大きく成長していきます。
・出雲市大社町鵜峠出身。

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