■解放出版社 20221029
有機農家、自主避難者、支援した人……福島の被害と苦しみをオムニバス形式で紹介する。
「被曝すると障害者が生まれるかもしれないからというもっともな理由で語られていました。……ある人はお姑さんから「あなたがこの地で避難せずに、さらにこの地でお産した。だから障害児が生まれたんだ」と言われたそうです」
「被曝したら障がい者が生まれる」という差別のあり方を提示したのが、類書にはない指摘だった。
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▽9 大熊町では2019年4月10日、大川原、中屋敷地区の避難指示が解除。
……解除の基準は年間追加被曝線量20㎜シーベルト以下。本来事故前は一般公衆は年間1ミリシーベルトでした。それが20倍。
▽11 精神的損害賠償は2018年3月で打ち切り、営業的損害賠償は2017年7月で打ち切り。さらに東電は、原子力損害賠償紛争解決センター(ADR)の和解案にたいしてなかなか応じなくなっています。
自主避難者への家賃補助も2017年3月末で打ち切られています。福島県は自主避難者4世帯にたいして退去と家賃支払いをもとめて提訴さえしています。
▽23 2016年7月に居住制限区域が解除された南相馬市小高地区では、元の住民約6000人のうち5割の住民がもどってきました。高齢者中心です。
▽27 槌田さん 有機農家との家族ぐるみでのつきあいから、安全な食べものを得る。測定してしまうとそこには、農家に対する信頼が成立しなくなる。まず一日との関係を大切にしてきました。そのなかで生産者と消費者双方が成長していく。
▽35 魚住道郎 2011年5月17日、三春町にあつまり、有機農業をつづけるかどうかの相談会。「最初からギブアップするわけにはいかない。まず一度、種を播いて育て、暫定基準500Bq/㎏を超えるようなら考えたらどうか。……結果をみきわめてからでも遅くはない」と呼びかけた。
……一部の専門家から、土と密接に結びついてきた有機農産物は放射性物質の移行が多いという見解がメディアで発表sれていました。
▽38 毎年、春と秋「猫の手・援農」。二本松有機農業研究会の会員の畑でお手伝い。毎時0.3μSv前後の数値はあたりまえに測定されます。(2012)
▽41 大熊の有機農家・渡部隆繁さん 最初のころ大熊で有機農家はうちだけ。あとからもう一人いたと知りました。……農家は昔から「農協に出せば売ってもらえる」という考えです。自分で販売するなんて考えなかったんだね。
……会津若松へ。
後の生活再建を考えないでお金を使っている人が多々あるワケです。そういうのを見ると、会津若松のまわりの人は「金もらってあんな高い買い物をしていくんだな」「飲み屋も避難者ばかりだ」とか陰口を言われています。
▽51 私は長いあいだ交渉に応じませんでした。……しかし、私一人が取り残されたようになり……金より代替地ということで交渉してきました。環境省も東電と同じで、代替地をさがしてくれる気はありませんでした。……悔しいけど泣く泣く手放すことになってしまったのです(中間貯蔵施設に)
▽58 震災後、大熊町は役場機能を会津若松市に移しました。……時間の経過とともに、町民が少しずついわき市にうつっていく。事故前、町民の多くは原発関連の仕事に従事していました。だからもとの関連の仕事にもどっていくわけです。
▽60 南相馬市の障害者 お子さんが障害者の青田由幸さん。
……子どもたちは被曝しないようにしましょうという運動が広まりました。なぜか、被曝すると障害者が生まれるかもしれないからというもっともな理由で語られていました。
……ある人はお姑さんから「あなたがこの地で避難せずに、さらにこの地でお産した。だから障害児が生まれたんだ」と言われたそうです。
▽64 飯舘村 2011年4月29日に今中哲二さんたちが測定のために飯舘村へ。最初、歓迎してくれた村当局は今中さんの「はやく全村避難すべきです」という言葉にかたくなな反応を示すようになりました。全村避難が完了するには3カ月を要しました。
▽67 伊藤延由さん 放射能測定値をFBやツイッターで毎日発信。……飯舘村に人が住んでもいいわけないということを少しでも多くの皆さんに伝えたいからです。測定をつづけてきてわかったことは山の汚染状態の深刻さです。
▽70 山の腐葉土。セシウムが根から吸い上げられて、葉っぱに移行するそれが地面に落ちてくさる。セシウムは腐葉土いになってとどまりつづける。それをもう10回繰り返している。
野焼きをするとせっかく懸濁態として存在していたセシウムが溶存態にかわって、作物に移行しやすくなる。野焼きをしないように議会に請願したが不採択。
……福島市内ならば、公園の入口に何月何日に除染凍ました。除染前と後の空間線量の刑事があるじゃないですか。それすら飯舘ではない。
▽74 自分の山の薪は燃やせない。村外の薪を燃やせという。余分にお金がかかる。2019年5月、この負担を東京電力に請求しましたが、拒否の回答がありました。……当然、薪を買うお金は、加害者が負担すべきものです。
……市販の薪は1㎏100円。ひと晩で50㎏つかう日も。11から4月の冬期で50-70万円の出費になる。
▽82 浪江長津島 浪江長は反対運動で原発を拒否した歴史を持つ。
2017年3月31日、避難指示が解除。
▽84 3月12日、「これから街の中心部の人たちが向かうので、地区の集会所を避難所として使わせてほしい」
……市街地から津島の中心部まで30㎏、ふだんなら1時間もかからないのに、3時間、人によると6,7時間もかかったそうです
▽86 15日夕方から霧雨、夜になると雪。この雪に放射能が含まれていることを知るよしもなかったのです。……避難をよびかけて福島へ向かいました.津島地区が高濃度の放射能に汚染されていたという事実を知るのは、1カ月以上たってからです。
▽88 裁判の特徴は、帰還困難区域の住民だけでまとまったという天です。共同体として培われた住民の絆があるのです。損害賠償を主に求めるのではなく、喪失したふるさとを元通りにすることをもとめた。
▽93 自治体は、住民票を維持してもらうことを考える。飯舘村は、認定こども園、小学校、中学校を新築。100人を超える子がスクールバスで通学。もちろん無料。移住者の受け入れも。県内からは120万円、県外は200万円、起業すると400万円が補助。
……飯舘村は2017年3月31日、長泥をのぞいて避難指示が解除
▽「奇形児が生まれるから原発はいらない」 堤愛子さん スリーマイルの「お化けたんぽぽ」障害は恐怖の象徴として語られた。
……15歳の少女の「もし、わたしが子どもを産めなかったら補償してもらえますか」というあのひとことの裏に、本当に差別とか、障害者に対する差別とか、さまざまなん¥ものがあって、ポッとあの女の子の口から出ている。
▽114 ナチス以前のワイマール憲法下のドイツにおいて優生政策が進められていました。それ以前にもデンマークで強制不妊手術を認める断種法が制定されていいますスウェーデンでも1930年代に強制的な不妊手術が実施されています。福祉国家の原点にある考え方が優生思想とも言えるのです。
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