■中公新書 20200117
ネット上のサイトを使ってデートの相手を探す「オンライン・デーティング」。30代の大学教授の女性が1年間のサバティカルでニューヨークに暮らしたのを機にこれを試した経験をつづる。
サイトの「自己紹介」でデート相手に求めるものとして「文学、音楽、芸術を楽しむ」「デートの相手には、トニ・モリソンを知っていることに加えて、政治的思考が左であることを強く希望します」と掲げる。それを見ると「トニ・モリソンの名前しか知らんオレはだめだな」と、私を含めて多くの日本人男性は思ってしまう。本の冒頭から男の読者を手玉に取ってしまう。
男性が女性をベッドに連れ込もうとするときの決まり文句は、4人に3人が「マッサージしてあげようか?」だという記述には噴き出した。「マッサージ」と言った記憶はないなあ。でももっと前の段階で「肩ももうか」と言った記憶はある。
ユダヤ系の男性は、理知的な意見だけではなく、自分の感情についても素直に表現し、優しく気を使ってくれて、ベッドのなかでもきめ細かい。インテリ家庭で育った人は精神分析に行くのが当たり前という。
ゲイの男性は、職業を超えたネットワークがあり、誰かが失業すると、仲間が交代でその人の食事代やオペラのチケット代をもち、以前と同じ社交生活をつづける。話をよく聞いてくれて、人前で涙を流すことを恥ずかしがらない。素直に感情を表現し、日常のちょっとしたことにも感動を見出す。
知的で開けっぴろげな女性の恋愛体験記としてもおもしろいし、アメリカの恋愛事情や民族や社会の観察日記としても興味深かった。
▽ユダヤ系のインテリ家庭で育った彼のような人で、一度も精神分析に行ったことがなかったというのは、かなり珍しいことだ。
▽1回目のデートは満足だったが、2回目には「これはやっぱり違う」ということがはっきりすることは何度もあった。
▽ユダヤ系の男性 理知的な意見だけではない。自分の感情についてもよく話す。愛情や感謝の情も、実に豊かに、感動的なくらいに素直に、表現する。日常のちょっとしたふれあいにおいても優しく気を使ってくれることが多いし、ベッドのなかでも概してきめ細かい。(たしかに〓)
▽ニューヨーカーというのは、実にフレンドリーな人々。地下鉄でせきをしていたら、おばさんにのど飴を差し出されたこともある。(意外〓、大阪のよう)
▽アメリカでは、演劇をやったことがあるという人は驚くほど多い。
▽ゲイのジェイソン
▽私は普段から、気に入った男性を自分の方から誘ったりすることにはためらいがないタイプだが、相手がゲイである可能性が高いとなると、それこそ恥じらいもなにもなかった。
▽ゲイの男性は、社交生活の中心がもともと仕事にはなく、職業を超えたゲイのネットワークがあることが多く。そうした仲間はサポートシステムとしても機能している。・・・誰かが失業すると、仲間が交代で、その人の食事代やオペラのチケット代をもち、以前と同じ社交生活をつづける。
▽ゲイの男性は、話を欲聞いてくれる。後になってもよく覚えているだけでなく、…私が伝えたいと思っていることを、本質的なレベルで共有してくれる。
マッチョな男性観から解放されている場合が多いので、感動したら、人前で涙を流すことをとくに恥ずかしがらない。素直に感情を表現するし、日常のちょっとしたことにも感動を見出す。
▽学術出版事情 門戸は誰にでも開かれているが、かなり厳しい審査を通過しなければ、どんな著名な教授の原稿でも本にならない。査読プロセスがある。
…原稿を提出してから実際に本の形になるまでには2年間はかかる。
▽ハワイ 強固なローカル社会。外部から来た人が入り込むのは難しい。先住ハワイ系とアジアからの移民の子孫が複雑に混じり合ってできた「ローカル」というアイデンティティは、「非白人」という人種的要素を含んでいるから、アメリカ本土から来た白人はとくによそもの扱いをされる。
▽ユダヤ系の人。世界中でマイノリティとして生きてきた長い歴史と、自分の考えや悩みを言葉にする文化をもち、精神分析を生んだユダヤ系の人々は「ニューロティック」のステレオタイプとして描かれがち。
▽男性が女性をベッドに連れ込もうとするときの決まり文句。4人に3人が「マッサージしてあげようか?」
▽「ケミストリー」を感じないとき。直観的なレベルでなにかが違うときには、いくら2人が努力してもそれはどうにもならないものだと思うようになった(男性の言葉 その通り〓)
▽結婚生活と離婚を経て、彼がそういう結論に至ったのだとしたら、離婚そのものよりも、彼がそう考えるようになったことの方がずっと気の毒に思える。
歳を取るにつれて、自分が心底受け入れられるものや共感できる相手というのは、より限定されてくるという気がする。
自分のもとめるものが特定化されてくるにつれて、「ケミストリー」といった、言葉にしにくいようなものも、実際どんどん重みをもってくるのかもしれない。人生とともにしたいと思う相手を見つけるのは、どんどん難しくなってくるのかもしれない。そう思うと・・・自分の将来全般について、なんだか悲観的な気分になってくる。
▽アメリカの結婚式 パーティーの一種。夜中過ぎまでえんえんと続く。たいていの披露宴では、生バンドの演奏があり、ダンスをする。
▽長距離の恋愛(〓「4年で終わる」)
▽(恋人と別れて傷心の時)ハワイは基本的にいつでも青空で、気温は年中20度台だ。ジェイソンやマイクが、私を毎日ビーチ沿いの散歩やジョギングに連れ出してくれた。…そのうち元気を取り戻した…仕事や友達や旅行や趣味に、喜びを見つけることができるようになった。
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