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2時間でおさらいできる日本文学史<板野博行>

■2時間でおさらいできる日本文学史<板野博行>だいわ文庫 20161231
加藤周一の「日本文学史序説」を要約して、かみ砕いて、中高校生にもわかるようにした、という印象を受けた。長い文学史を一覧できるから大きな流れが理解しやすい。それぞれの作品の魅力的な部分を引用しているから、原典を読んだみたくなる。
万葉集は庶民の作品も収めていたが、その後、和歌は貴族の独占物になってしまった。江戸時代の国学者・契沖が「万葉代匠記」をあらわし、正岡子規がとりあげて、万葉集は再評価されたという。
平安時代の女流文学は、嫉妬と恋の歌が一世を風靡し、伊勢物語の在原業平は、若い娘から99歳の老婆まで3733人と寝たプレイボーイだった。中世の「とはずがたり」は、赤裸々な恋愛遍歴を記し、信頼していた人から強姦されたことまで描いた。 一休は、50歳下の森女と心の欲するままにお互いをまさぐりあう様子を赤裸々に記し、「美人の淫水を吸ふ」などという淫詩も残した。古文というと堅苦しいイメージがあるが、今以上に赤裸々な性描写をしていたことを知ると読んでみたくなる。
西行法師の短歌は昔から好きだったが、筆者は源実朝の歌も評価している。はじめは繊細優美な「古今調」、次に象徴的で情緒的な「新古今調」、最後には雄大な「万葉調」に変化したという。筆者が引用している歌もよいのだけど、私が好きなのは「大海の磯もとどろに寄する波 割れて砕けて裂けて散るかも」かな。
明治期の二葉亭四迷は「です」調、尾崎紅葉が「である」調という現代文の基礎をつくった。自然主義に反対する立場を取ったのが、明治末期は漱石や鴎外で、大正期は耽美派と白樺派のメンバーだった。
戦後の作家は「○○派」という色分けはしにくい、という。この本でも戦後はさらりと流していた。

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▽上代
古事記・日本書紀
万葉集 和歌は貴族の独占物になり、「古今和歌集」以来の伝統を重んじる旧態依然としたものとなり、「万葉集」は忘れ去られてしまった。江戸時代の国学者・契沖が「万葉代匠記」をあらわし、正岡子規が登場して評価は劇的に高まった。
▽中古
浮気な夫に苦しむ道綱母の恨み節「蜻蛉日記」  浮気相手の女が産んだ子が亡くなり「胸のつかえが取れて清々した」
和泉式部、紫式部…(嫉妬と恋の歌…花盛り〓)
竹取物語は、日本最古のSF
伊勢物語 在原業平の物語。若い娘から99歳の老婆まで3733人と枕をともにしたプレイボーイ。
芥川や谷崎も感動した「今昔物語」説話集。
▽中世
西行法師 ねがはくは 花の下にて 春死なむ そのきさらぎの 望月の頃
源実朝 はじめは技巧的で繊細優美な「古今調」、次に象徴的で情緒的な「新古今調」、最後には雄大な「万葉調」
山は裂け 海はあせなむ 世なりとも 君に二心 わがあらめやも
三代説話集「今昔物語」「宇治拾遺物語」「古今著聞集」 中世は「説話」花盛り。
「とはずがたり」 赤裸々な恋愛遍歴日記。信頼していた後深草院から手込めにされたことを描く。
一休 50歳下の森女との口づけや、心と体の欲するままにお互いをまさぐりあい、求め続ける様子を「狂雲集」において赤裸々に。「美人の淫水を吸ふ」などという淫詩を残している…
▽近世
芭蕉は伊賀上野出身で、1日50キロ移動することも。忍者だったという説も。
与謝蕪村を激賞したのが正岡子規。「五月雨や大河を前に 家二軒」は、芭蕉の「五月雨を あつめて早し 最上川」よりも優ると断言した。
▽近代
二葉亭四迷「です」調、山田美妙「です」調、尾崎紅葉「である」調。
自然主義に対して、反自然主義な立場を取ったのが、明治末期においては文豪の漱石や鴎外で、大正期は主に耽美派と白樺派のメンバーたちがいた。
森鴎外 長男にオットー、長女茉莉(マリー)、次女杏奴(アンヌ)などきらきらネームをつけた。義弟の孫の一人が星新一。
▽現代
戦前までの「○○主義」等でくくられる傾向のはっきりした作家群から、作家の個性が多様化し、文壇が消滅した。
檀一雄 「火宅の人」私生活の暴露
第二次戦後派作家 「私小説」の手法を捨てて、西欧の文学理論や二十世紀小説の手法を取り入れた。大岡昇平、三島由紀夫、安部公房…
三島「憂国」「もし忙しい人が、三島の小説のなかから一編だけ、、三島の良いところと悪いところすべてを凝縮したエキスのような小説を読みたいと求めたら、憂国の一編を読んでもらえばよい」
「第3の新人」吉行淳之介の母は吉行あぐり、妹は女優の吉行和子。遠藤周作。
石原慎太郎「太陽の季節」映画化され、弟の裕次郎が俳優としてデビューするきっかけを作った。開高健、大江健三郎。
中上健次、庄司薫、柴田翔、北杜夫。

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