集英社新書 20080411
アラモも米西戦争もフィリピンの占領も真珠湾も同時多発テロも、「リメンバー」とさけんで、米国は戦争に邁進した。嘘をメディアに流してでも戦いの正当性をでっちあげた。
米国人の安全と財産を守るため、という名目で軍を派遣するというやり口も現在にいたるまで繰り返される。相手国の反政府運動を支援し、独立を果たしたら彼らに銃口を向け植民地化する、というパターンもある。
こうした米国の常套手段「パターン」を長年の侵略史をならべて紹介していく。どれもチョムスキーなどの本にでてきた話だが、よくまあこれだけの資料にあたってるなあ、と驚かされる。いったいどれだけの本を読み、どれだけのスピードで原稿を書いてしまうのだろう。
アメリカの侵略史を大ざっぱにつかむのに最適な本と言える。
一方、最近の「反米」の動きの紹介は、これまで報道された事実をさらりと流している印象だった。
------抜粋・メモ-------
▽19 2002年ベネズエラのクーデター 率いたバスケス陸軍司令官は、「米軍アメリカ学校」出身。デモの人集めや宣伝資金に約5億円の資金がアメリカの財団から出ていた。クーデター当時、アメリカ軍の大佐と中佐が、クーデターを起こした国軍の司令部にいた。チャベスが拉致された基地には亡命させるため、米軍差し回しの飛行機が来ていた。
2004年、ハイチのアリスティドも、米軍が強制的に飛行機にのせて中央アフリカに無理矢理亡命させた。
▽23 裕福な国ウルグアイで2005年、独立以来の左派政権。
▽31 ボリビア コカ。伝統的なお茶。それを一方的に米軍が焼き払う。「コカ戦争」と呼ばれた抗議運動に。
▽50 ペリーが旗艦として乗船した軍艦サスハナ号は、メキシコとの戦争中に建造された。ペリーは琉球王国だった沖縄に上陸して一時占領し、小笠原の父島では石炭供給の港とするために土地の一部を買い、住んでいたアメリカ人にはアメリカ保護下の政府を設立するよう指示した。テキサスをメキシコから奪ったやり方で、アメリカに併合しようとした。
▽59 米西戦争は「メイン号を忘れるな」とメディアがあおることでスペインに宣戦布告。実はメイン号は自然発火で沈没していた。作り話で仕掛ける戦争。
▽70 フィリピンでもキューバと同じ地元の独立運動を支援する姿勢を見せ、戦争が終わると銃口を彼らにむけて植民地化する。
ハワイも。
▽78 パナマ 鉄道が完成。アメリカ人がそれを利用したことで、パナマに軍隊を派遣する口実を得た。鉄道というアメリカの資産の確保と、米国民の安全を確保するため、という口実だ。同時に、鉄道によって、運河建設の土砂をはこべることに。
フランスのレセップスが着工したが倒産。
89 運河利権を維持するため、パナマに中央銀行設立を許さなかった。運河地帯に南方軍の司令部。
▽海兵隊 侵略の先兵。ペリーの船に乗りこんだ海兵隊員200人が途中で琉球に上陸し、首里城を占拠した。
▽95 グアテマラ 移民で米国の人口増大。食糧獲得のため、海外に食糧基地を作ろうとした。中米をバナナ共和国に仕立てたのがマイナー・キース。鉄道工事の責任者になり、その資金調達のため、鉄道沿いにバナナを植えた。その後はバナナを運ぶために鉄道を作るようになる。「緑の法王」
ベイカー船長もカリブのバナナを米国に持ち帰って財をなし、企業家プレストンと、のボストン・フルーツ社をつくる。それとキースの会社とが合併して1899年にユナイテッド・フルーツ社ができた。=チキータ
1900年にはシチリア移民のバッカロ兄弟がスタンダード・フルーツが誕生。=ドール
▽103 ハコボ・アルベンス政権 農地改革。1950年当時、農村地帯に住む人の57%は土地を持たなかった。土地をもつ零細農民の76%を集めても、全耕作地の10%足らず。2%の大金持ちが、耕作地の70%を独占していた。ユナイテッド・フルーツ社は、国土の42%の土地を支配していた。
国務長官のジョン・フォスター・ダレス、弟でCIA長官のアレン・ダレスは、ユナイテッド・フルーツの大株主だった。
バナナ輸送船で反乱軍の兵士をアメリカからホンジュラスに運び、武器も密輸し、同社の鉄道で武器をとどけた。グアテマラ国軍は6000の兵力を国境地帯に派遣したが、戦わないまま引き揚げた。国軍幹部がアルベンスを見限った。
▽125 チリの国家情報局(DINA) アメリカに亡命したアジェンデ政権の閣僚をCIAの協力で暗殺した。
ブラジル・アルゼンチン・ウルグアイ・パラグアイと軍政の時代。民族主義や農地改革を求める動きが活発になったことへの懸念から。各国の軍部が連携し、反政府派を摘発する。「コンドル作戦」。拷問マニュアルを教えたのは「米軍アメリカ学校」。ピノチェトの前任の陸軍総司令官だったプラッツ将軍は、アルゼンチンに亡命していたが、DINAによって暗殺された。……
▽136 ニカラグア CIAはデスコト外相の暗殺も計画。ホンジュラスのニカラグア大使館の女性を手なずけ、ワインに劇薬のタリウムを入れて飲ませようとした。彼女がニカラグア国防省に届けて発覚。
▽145 米軍アメリカ学校 拷問や暗殺の方法、クーデターの起こし方……
▽156 パナマのノリエガ 「パナマの政情が不穏になり、アメリカ人の生命が危険にさらされている。米国人の生命とパナマの民主主義を守り、麻薬取引を撲滅する」と侵攻。
▽174 キューバ 農地改革 耕作地の75%はUFCが所有していた。補償は年利4.5%で、期限20年の政府公債で支払われることに。補償の条件は大企業が支払っていた税金に応じて算定された。独裁政権時代に税金が優遇されていたため、米企業にとっては裏目にでる。それでも日本の農地改革のレート、年利2.5%、期限24年に比べればはるかによい率だ。
「キューバに対するアメリカの戦争」 カストロ暗殺計画は638件。……62年にはキューバに細菌を持ち込んで、市民や作物に感染させようとした。72年には豚50万頭がウイルスで死んだ。78から81年にはデング熱が流行して34万人が感染した。……
▽185 2001年のハリケーンで、キューバが被害を受けた。アメリカはテロ直後で、反イスラムの感情が強かった。人道的見地から緊急食糧援助を申し出た。カストロは「経済している国から施しを受けるのは嫌だ。食糧をもらうのではなく買おう」と言った。これをきっかけに実質的に貿易が再開した。イリノイ州を中心とするアメリカの農産物業界は、実はキューバとの貿易を待ち望んでいた。彼らは制裁解除をロビー活動することに
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