振り売りの縄張り

魚の振り売りのおばさんを待っていたら、
角のおそば屋さんを
「ちきねーっ!!」(しんどい〜!!)と、絶叫しながら曲がってやってきた。
ゴジラの叫び声みたいだった。
その声につられて、ご近所さんたちが魚のリヤカーの周りに集まってきた。
「いつまでも暑(あち)ぃね」
「ちきねー、ちきねー」
「今日はなんのサカナある?」
すると、買い物帰りの隣のばあちゃんが通りがかった。
誰かがばあちゃんのアッパッパー(ワンピース)を見て
「涼しそうなの着てるね」と話しかける。
「どこで買った?」とサカナ屋のおばちゃん。
ばあちゃんは、ヨソで魚を買ったことを責められたと勘違いし、
「すすすすまん…。マルコー(スーパー)で、さささ鮭のみそ漬けを…」
しどろもどろになって言い訳していた。
振り売りのおばちゃんは町中にたくさんいて、それぞれ縄張りがある。
隣町の知り合いのおばさんはヨソで買ったことがバレて怒られたという。
振り売りおばちゃんと地域のおばちゃんは運命共同体。
地域のつながりが失われ…と枕詞のように使う人たちに知ってほしいものだ。

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