最後の刺し身

201505saigo-sasimi

お昼前に引っ越しのトラックが荷物を積んで出ていった。
だだっ広い部屋でしばし呆然としていると、
いつも通りの時間に魚屋のおばちゃんがやってきた。
もはや買うものもないけど、条件反射で出て行ってしまった。
最後に刺身でも食べて出ていくか、と思ったら、
オマケにカニのほぐし身をつけてくれた。
「ねぇちゃん、こっち来て肥えたさけな」と、
自分の販売実績を確かめるがごとく、丸くなった私の肩をペチペチ叩いた。

お向かいさんに刺身の柵をを切り分けてもらうと、その様子を察し、
「しょうゆあるけ?」「わさびあるけ?」「おつゆあるけ?」
…と、みんな気が気でない様子だった。
かどちょうさんから差し入れてもらったおにぎりと一緒に、
最後の刺身をかみしめた。
「まれ」の時間を見計らって出発しようとしたら、
ご近所さんがぞろぞろ出てきて見送ってくれた。
ばあちゃんは「泣いて迷惑かけるから」と、息子に連れ出されて不在だった。
そんなしおらしいタイプじゃないけど、
ま、そーゆーことにしておこう。

またお会いする日まで、みなさんどうぞお元気で!!

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