不昧公の町へ

松江

朝一番の飛行機に乗って、松江に家を探しに行く。
機内で転勤マニュアルを読むうち、まもなく眼下に雪をかぶった大山が見えてきた。
家を出るとき、大阪は春を予感させる暖かさだったのに、
山陰はまだ冬景色。雲に覆われ街が見えない。
宍道湖に着水するかのように着陸。
出雲空港での気温は1度。大阪より3度低い。手袋が再登場。
空港から松江の街へ向かう。霧が深く眠ったような印象。
不動産屋さんとの約束までまだ時間があったので、
レンタサイクルで街をぐるり。
県庁の分館に「帰れ竹島」の看板。
所有があいまいなだけに「返せ」と言えないのだろう。
「帰れソレントへ」というカンツォーネみたいやな。
町中に堀が巡らされ、落ち着いた雰囲気。
道路も歩道が狭く、自転車の専用道路があったらいいのにな。
日銀のある辺り、いわゆる中心街はドーナッツ化現象。
空き地をみてもったいない!と思うのは都会の人だけか。
小1時間もあれば見て回れる。退屈せんやろか、と心配になってくる。

不動産屋さんは地元で30年以上商いを続けている。
人あしらいのうまいオバチャンと実直なオジサンと
ちょっと頼りなさそうな息子。親子3人でワヤワヤやっている。
「今日は暖かくて天気も良くてよかったですね~」
どこがやねん!つっこむには相手がいい人すぎる。
息子がパソコンで物件を検索。
賃貸物件があまり数が多くないようだ。新築する余力もないのかなぁ。
タワーマンションが無いのは結構だが、最高級マンションが
「アルファステイツ」。地方都市はみんなそうなんやろな。
ハイツと「アルファステイツ」の間の物件が少ない。
国道沿いの物件では
「少し車の音が気になるかもしれませんが、8時過ぎたら
車も通りませんから」
そんなさみしーこと言うなよォ~。
大阪なんか8時過ぎてから車が(暴走族)うるさいのに。
「都会から来られた方は治安を心配なさいますが、空き巣とかそんな話聞いたことありません」
見りゃわかるよ。
親切なことに市内を案内してくれた。
お魚のおいしいスーパーやらお肉屋さんのコロッケやらゴミ捨て場まで。
不動産屋に戻って契約書にサイン。
重要事項説明を聞きながら、カステラやらかまぼこをお茶請けに出してくれる。
かまぼこはおみやげに持たされた。
大阪への土産に和菓子屋さんで買い物。
和菓子は充実している。いわゆる「おみやげ用」の「安くて数のある」、というのはなく、
「いつも自分たちが食べているおいしいやつ」なので、質は高いぶん割高。
おまけのお菓子までつけてくれた。
「どこからお越しですか」
「大阪です」
「まぁ、ようこそ」
と感じがいい。
松山なら
「まぁ、遠いところから」みたいに上から目線で言われることだろう。
「お接待の心」なんてわざわざ言わなくても、みんなフツーに親切。
もちろん城下町のイヤラシさはこれから感じてゆくことだろうけど、
えばってないし、ヒクツでもない感じがいい。
このまちも好きになればいいな、と思う。

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