すばらしい作品なのだけど、救いのなさがたまらない。
フィリピンの貧困地区に住むローサは夫とと雑貨店を営みながら、覚醒剤を販売していた。ところが密告されて警察に捕まってしまう。警察の留置記録に記されず軟禁された部屋で「10万ドルよこせ」と要求され、そんなカネはない、と言うと、仲介する男を売れと求められる。
男の名を教え、捕まえる段取りまで協力したが、「5万」を要求される。末の息子は男娼となり、娘は親戚中にカネを借りまくり、長男は家財を売り払い……。
たったひとつの密告で、ダニのような警察官に骨の髄まで吸われて破綻してしまう庶民のなげきを描き出す。
平穏で退屈な日常の板子一枚下には地獄があるのだ。
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