ぶたくさ忌

ブタクサ忌

父の命日が近い。寝る前にふと、
「私が死んだら、命日をなんて呼ぶ?」とゴローに聞いてみた。
太宰治の命日「桜桃忌」には、今でも若者の墓参が絶えない。
司馬遼太郎の「菜の花忌」は、氏の素朴で温かい人柄が偲ばれる。
ゴローは即答。
「ぶたくさ忌!」。
「えー!!そんな嫌われもん、イヤぁ~!太宰みたく、かわいい果物の名前がいい!!」
「バナナ忌」
「キィーッ!!サルやんかっ!もっと季節感あるの!」
「じゃあ正月に餅を詰まらせて大騒ぎしそうだから、お餅つ忌」。
「なんじゃ、それ? じゃあアンタはなんなのっ!?」
「オレ? あじさい忌。あ、月見草忌かな」
「……。あのさ、もっと私を偲ばせるものとか無いの?!」
「ロールケー忌。あ! ど派手にデコレーションケー忌でどうやっ!?」
しんみり聞いたつもりが、腹が立ってしばらく寝つけなかった。

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