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花よりもなほ <是枝裕和監督>

 20060618

江戸の下町のぼろ長屋に住む、父の敵をさがす武士の子が主人公だ。
ふきだまりのような長屋には、始終飛びはねている男や、知恵袋のじいさん、やくざもの……そして、掃き溜めに鶴じゃないけど、子供をかかえた美人未亡人。さらには、吉良上野介への主君の恨みをはらさんとする赤穂藩の藩士たちもひそかに住んでいる。
家はぼろぼろ、服もぼろぼろ。貧しさの底の底なのにみんな個性的で明るい。
主人公は、けんかなれした住民に軽くいなされ、こてんぱんになぐられ、武士の誇りがずたずたに傷つけられる。
主人公は未亡人にほれる。実はその未亡人の夫は殺され、未亡人もまた敵討ちを考えたことがあったのだった。
そんなとき、主人公の「かたき」が見つかる。後妻と連れ子といっしょに長屋に幸せに暮らしていた。
これまで、酒や飯をおごるかわりにかたきの行方さがしをたのんでいた男に
「実は見つかってるんです」というと、
「知ってたよ。……長屋だろ」
仇討ちなんでくだらねえ、そんなことやめろ、という庶民のしたたかさだった。
ついに「かたき」を呼び出すが結局……
雪の日、「忠臣蔵」がついに起きる。
「なんでえ、やつら、人殺しじゃねえか。ご隠居1人をよってたかって殺しやがって」
と言いながら、「ここは浪士たちが潜んでいた長屋だ」と売り出して、饅頭をつくって売って……。
平和になって無用の長物となった武士。それに頭を下げながら内心はバカにして舌をぺろりとだしている庶民。「武」「もののふ」という存在を笑いとばす庶民の姿は、なにかと勇ましさや「品格」を求めようとする現代への皮肉に見える。
主人公はジャニーズのジャリタレ役者だそうだが、無難に演技をこなしている。未亡人役の宮沢りえの演技はへたくそだが、脇役陣がすばらしく、あきさせない。
久しぶりの日本映画の秀作だ。

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