■映画20230718
吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」は小学校のときから何度も読んだ。
主人公のコペルくんとおじさんが語り合い、人とつながりながら自律した人間として生きる道をさぐるという小説を、アニメで描けるのだろうか? そう思って観賞したら、原作とはまったく異なる、宮崎駿らしい冒険活劇だった。
戦時の空襲で母を亡くし、軍需工場の社長をつとめる父は母の妹と再婚する。「新しい母」への違和感から物語ははじまる。
疎開先の屋敷には、大叔父がつくった古びた塔がある。ある日、新しい母はその塔で雲隠れしてしまう。彼女を追って、地下にあるアナザーワールド(あの世)へ。
現実の世界の裏側にはそれを支え、そこから現世の「命」が生まれる「あの世」がある。プラトンのイデアの世界ともいえる。
現世は戦争だが、大叔父がかろうじてささえていたあの世(イデアの世界)も崩壊の危機にある。主人公は「あの世」の統治者になるか、つらい現世にもどるのか選択をせまられる。
理想を求めながら、足もとの現実にかかわりつづける大切さ。そこに「君たちはどう生きるか」が垣間見える。
冒険活劇としては、今までのジブリ映画とくらべるとわかりにくい。でも「わかりにくい現世を生きる」ことを選ぶというありかたそのものが、宮崎駿がつたえたかったものではないのか、と思った。
もう一度、原作を読んでみたくなった。
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