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映画「けったいな町医者」

■20210410
 尼崎市で2500人を看取ったという長尾さんという町医者のドキュメンタリー。
 大病院では最後の最期まで治療をしようとする。最後の一線を越えると「もうできることはありません」と追い出される。
 命の残りが限られたときにつらい治療を強いていいのか? 少しでも助かる可能性があるならばすがりたいけれど、それが本当に患者のためなのか?
 患者も家族も右往左往しながら、「治療」中心の病院の方針に巻き込まれていく。
 たとえば点滴。大病院では末期の患者にも「必要だから」と1リットルも2リットルも水分を補給する。その水が肺にたまったり全身のむくみになったりする。「最期は溺れて死ぬ」と私も知り合いの看護師から聞かされた。
 主人公のクリニックには、点滴は牛乳瓶程度の大きさのものしかないという。水分とブドウ糖を補給すればつらくなるだけだからだ。
 体内に水がたまらなければ呼吸が楽になり、むくみも取れる。枯れるように死んでいくから苦痛が少ない……。
 主人公は往診と福祉との連携によって、病院で体力を落として認知症になってしまった患者の回復につとめる。
 実感としてよくわかる。自分の取った選択はそれほどまちがっていなかったなあと思った。
 老人は何十種類もの薬をのむことが多い。それによって体調を崩すことも少なくない。「薬を使わずに体調を管理する能力のない医者ばかりや」「医学部教授の医師でひとりでも餓鬼道に陥っていない医師がいるなら教えてほしい」と長尾医師は言う。
 ひとつの病気を治すあまり、人間としての命をむしばむ医師が多い。「人間」を支える医療を追究する主人公が「けったいな医者」と呼ばれる医療の現状こそが「けったい」なのだ。

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