舞台は、祖国チリを追われた詩人のパブロ・ネルーダがつかの間の亡命生活を送った1950年代のイタリアの小島。
漁師の息子で、内気な青年マリオは郵便配達夫になり、ネルーダの家に郵便物を届け、詩人に刺激をうけて自らも詩をつくりはじめる。飲み屋の女ベアトリーチェに恋をして、ネルーダの力を借りて詩を届け、結婚につぎつけた。
ネルーダはチリに帰国する。関係は途切れ、マリオと家族たちは「忘れられてしまった」とがっかりする。
まもなくベアトリーチェは妊娠し、マリオは生まれてくる子に「パブリート」と名づけることに決める。
5年後、ネルーダ夫妻は島を再訪した。5歳のパブリートがいるが、マリオの姿はない。「マリオはパブリートには会えなかった」とベアトリーチェは言う。
パブリートがおなかにいるとき、マリオは詩を書きながら共産党の活動に参加していた。詩を朗読することになっていた大きな集会で官憲が襲いかかり……。
愛の詩人であり共産党員でもあったネルーダ役は本人にそっくりで、マリオは純朴で情けない青年が文学や政治にめざめる様子を演じきっていてる。マリオ役の俳優は撮影終了直後に亡くなったという。
1973年のチリのクーデターの日に命を落とすパブロ・ネルーダの未来を知っているからなおさら切ない。「ニューシネマパラダイス」に似た雰囲気の傑作だった。
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