富山市議会の政務活動費問題をスクープし、市議十数人の辞職につなげた富山市の「チューリップテレビ」の取材の過程を記録したドキュメンタリー。
はじまりは富山市議会議員の月給10万円アップだった。
市議会のドンと呼ばれる自民党議員に「有権者は納得できない」とただすと、「市議をやめたら5万円の年金しかない。そんなんで食っていけますか? 余裕のある金持ちだけが議員になってもいいと思うのか?」と問われ、反論できないまま「言いくるめられてしまった」。
そのはじまりがなんともかわいい。
そこから政務活動費の情報公開を申請する。すると、やってもいない報告会の資料印刷などに莫大な費用を計上している。会場になったとされる公民館に裏をとり、突きつけることで、シラを切っていたドンが辞職する。
「膿を出し尽くす」と豪語する議長の不正もばれ、それを批判していた反主流派の議員の不正も明らかになり……。
市長は「それは市議会の問題です」と他人事のような顔をしていたが、市役所や教育委員会の幹部が、請求内容を議員側にもらす守秘義務違反を犯していたことも明らかになる。
議員も不正を糺そうとした別の議員も市の幹部も……次々に「申し訳ありませんでした」と謝罪会見をひらく。
さらに、政務活動費の問題を批判して当選した若手市議は、議会事務局の意中の女性の机をまさぐったことがばれてしまう。
その市議に対して、政務活動費の不正をしながら市議の座にいすわる議員たちが「辞任勧告」の決議を突きつける。若手市議はそれに反発して「おまえらには言われたくない。市議会の膿を出し尽くすため、辞任しない」と居直る。
いばって居直ったのはいいいけど不正がばれて謝罪。「反省して出直します」と宣言したと思ったらさらに不正がばれて謝罪。批判した人間もまた謝罪。
権威と思われていたものも、それを批判する側もインチキだらけ。演出ゼロの事実の映像だけなのに、一流の喜劇のように滑稽だ。
最後、チューリップテレビで活躍していた記者は会社側の圧力で辞職を決意する。マスコミもまたハリボテだった、という悲しいオチがついている。
北海道警事件を思い出す。道警の不正を追究しつづけた取材班は解体させられてしまった。それと同じことが富山でも起きた。
それでもなお、彼らが右往左往しながら報道しつづけてきた価値は十分に伝わってきた。
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