■第七藝術劇場で 20191026
「死を生きた人びと」の著者で、森鷗外の孫の小堀鷗一郎医師とその仲間の「看取り」の在宅医療を記録したドキュメンタリー。幾人もの患者の最期の日々を死に顔にいたるまで丹念に映している。
この映画を見るのは怖かった。
でも、身近な人の死は、いつかはだれもが経験するのだから、自分の悲しみの殻に閉じこもっているべきではない。直視するきっかけになるかなと。
身につまされたのは子宮頸がんの52歳の女性だ。母親の介護を受けているが、吐き気や痛み、むくみで苦しむ。モルヒネなどを調整して痛みを取り、自らが迫り来る死を受け入れることで、わずかの間だが穏やかな日々を送り、旅立っていく。
末期がんの父親を介護する全盲の娘は、父の意識がなくなり、「喉仏が動いてるのは呼吸している証拠です。それが止まると最期です。のどを触っていてあげて」と言われて父の喉仏が動かなくなる瞬間を感じた。
亡くなるとき、「よい人生だったねぇ」「がんばってくれたねぇ」と語りあう。深い悲しみのなかにあっても、家で看取ることができると、ある種の充足感も感じられるのだ。
でもなかには、介護負担が重すぎて施設に預けられるおばあさんもいた。
涙が止まらなくて、映像をしっかり見られない個所もあったが、「死」を避けてはいけない。死を身近に取り戻さなければいけない、ということがひしひしと感じられた。
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