名参謀オバサン

カネガエさんは、よその自治体で市議の経験があり、以前には町長選に出た。
バイタリティあふれる容貌通りのスーパーおばさんだ。
最近では今暮らしている町の伝承の記録を編集、発行した。
タケ子選挙にも手伝いに来てくれた。
事務所でポスターを嬉々として描いている私を見て、
「ウチの娘もウルサイ!と思ったときは紙と鉛筆渡してたなー」
街宣車に乗ったとき、私が校門前で生徒を迎える先生に向かって
「お仕事ご苦労様です」と言うと、
「ご苦労様、は目上の人に言うモンじゃないの!」
演説の内容について意見を求めると、
「観念的になりすぎると聞いてる方は余計混乱する」。
他の女性候補について私がケチをつけると、
「そんなこと言うもんじゃないの!こういう人が議会に入ればむしろ雰囲気が変わるのよ。それより落とさなきゃいけないオヤジがいるでしょ!」
と選挙公報を引っ張り出し、
「で、どいつが一番悪いヤツ?」と聞く。
事務所にいたみんなが一斉に
「●△※◎!!」と答える。
「そっか、コイツだな」とペンでバッテンを入れる。
事務所の人は
「誰が見るかわからんけん、ペンはやめて鉛筆で書いてください」
と懇願。ただでさえ誹謗中傷にナーバスになっているのだ。
「で、あとは誰だ?青いリボンつけてるヤツは?!」
「△▼×◎!」
「※○□●もアカンわい!」
市民派が乱立し、恨み節モードに陥りやすかったムードを
カネガエさんは敵をハッキリさせることで、変えてくれた。
そして事務所の周りをぐるりと見渡し、
「あそこの弁当屋は?」と隣の「他弁当」を指さす。
「ああ、あそこは脂っこいけん」と事務所の人が説明。
「そうじゃないの!普段からおつき合いはあるかって聞いてんの! そうやって自分から線を引いてしまってんのよっ!」
手作りで質の良いものを、地産地消費で…みたいな、自分たちの価値観が染みついてしまって、こんなことを見落とすなんて。
夜、打ち合わせの時間、身を乗り出して話したり、老眼鏡をはずして名簿をにらむカネガエさんを見て、
歯に衣着せぬ発言や存在感、(体型も)…、キョーコさんのことを思い出さずにいられなかった。 (つづく)

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