4月 302020
 

「料理の写真を美しく撮ってもらえませんか」と言われた。
 美しくって言われてもイメージがわかない。困惑していると
「ランチョンマットとか箸置きとか使って、おいしそうに見せて欲しいんです」
 ランチョンマットってなんだっけ? と一瞬戸惑って、食器棚にいっぱいあった布を思い出した。
「あのー、全部処分しちゃったんだけど」
「エッ!?」
 Tさんは絶句した。
 僕の美術のセンスは壊滅的だ。
「ミツルの絵でうまいのは宇宙戦艦ヤマトだけや。ミツルに美的センスを求めるなんて、赤ん坊にマルクスを読ませるようなもんや、せやろ?」
 Rはいつもそう言って笑っていた。
 自分で使いこなせないものは見るのがつらいだけだから、おしゃれな布や箸置き、食器はすべて手放した。箸置きも20個はあったけど、どうせ使わないからひとつを残して処分した。
 使いこなせないけど残しているのは、彼女が買いそろえた輪島の塗り物ぐらいだろう。
 そのなかに杉板のランチョンマットがあった。
 壊滅的な美的センスでまともな料理写真を撮るのは絶望的だけど、とりあえずきょうは「イワシの梅煮」をつくることに。作り方は【http://www.reizaru.sakura.ne.jp/saru/?p=11297】にまかせて、杉板ランチョンマットと唯一の箸置きを取りだした。
 背景が寂しいから「菊姫 山廃純米」の四合瓶と輪島塗のおちょこも動員した。おかずが一品だけじゃ見栄えがしないから、厚揚げも添えてみた。
 「美しい料理」というTさんの要求は、口調はやさしいけど、鬼コーチ以上にきびしい。
 遠からずギブアップするんだろうけど、新しい世界を体得するという、桜が12月に満開になるより低い可能性に期待して、もうちょっとだけもがいてみよう。

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