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遍路⑰霧の海 浦ノ内湾~土佐久礼 20200213

 朝食に出た、沖うるめ呼ばれる魚はサヨリかキスに似ている。味はイワシとサヨリの中間でおいしい。朝から夕飯のようなごちそうで、食後のコーヒーまで合った。

 7時に出発。浦ノ内内湾は霧で真っ白。幻の世界に浮かんでいるようだ。太陽の光で霧の海が金色のスクリーンのように揺らめく。

 「ポンカンの立目」という看板が立ち、無人販売のスタンドがいくつもある。「試食、お遍路さんもどうぞ」と書いてあるから1個いただく。甘くておいしい。

 昨日よりペースが断然速い。平均時速4.5キロを昼まで維持してしまった。
 8時35分、浦ノ内のまちに入った。宿の近くからここまで巡航船がでている。遍路道は2つに別れるが、距離が短い南側を選んだ。

 コンクリート護岸に沿って白い霧が吹き上がっている。霧の宍道湖を思い出してしまった。

 9時すぎ、内湾と別れて須崎方面へ。

 峠のトンネルを抜けて下ると、住友大阪セメントの塔が見えてくる。カルスト周辺の石灰を原料にして発展した工場なのだろう。
 セメント工場からはゴーという重低音が響く。この音とオイルのにおいが懐かしい。高度成長期前後、下町でも農村集落でも小さな町工場があり、オイルのにおいが漂っていた。遊び道具になる廃材が転がっていて子供には楽しかった。
 郊外の国道をぐるりとまわる。国道のトンネルをくぐり、11時半に「道の駅かわうその里すさき」に着いた。5時間で20キロも進んだ。
 ペースの早さに満足して、宿を予約しようとしたら、久礼のふたつの旅館とも満員、高級な黒潮本陣も休み。「ゲストハウス恵」に電話すると「相部屋なら」となった。相部屋は気が進まないけど、これもひとつの経験だ。
 角谷トンネル手前「日鉄鉱業株式会社鳥形山鉱業所」がある。鳥形山は、石灰を掘るために山の形が変わってしまった。
 トンネルで山を抜けると、静かな湾を望む斜面はポンカンと墓地公園で覆われている。高齢化の次はネクロポリスになるのだろうか。


 12時54分、安和駅の線路をくぐり、右手の集落に入って焼坂峠の遍路道を目指す。ところが、線路をくぐる位置をまちがえて40分以上も迷ってしまった。
 線路沿いの荒れた林道に入り、まもなく登山道へ。急坂に残る石畳は濡れて黒光りしてよくすべる。ロープがあるのはありがたい。杉林、竹林、また杉林と繰り返す。30分ほどで林道に合流したと思ったら目の前が峠の切り通しだった。

 西側は木漏れ日が明るい。等高線に沿って緩やかに下る心地のよい山道だった。
 15時すぎ、舗装道路に出て、まもなく国道と合流した。

 線路を挟んで国道と平行する旧道をたどり、橋を渡って久礼のまちに入った。

 商家のような家々が多い。「純平」の酒蔵や、お世話になった「多田水産」の前も通った。

 「ゲストハウス恵」はふつうの民家で、素泊まり3500円。
 35.2キロも歩いたが、それほど疲れなかった。
 相部屋になった広島のAさんと駅前の居酒屋で食事をして、スーパーで日本酒を買って部屋で飲んだ。彼は石工だという。中国の安価な石に押されて大変らしい。職人の世界の話は興味深かった。(つづく

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