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遍路㊴重文の宿 一宮寺~志度寺

 雨だ。飯を3杯食べて6時半出発。
 予報では7時には雨はやむことになっていたが甘かった。
 風変わりな顎無地蔵を見て、コンクリート製の沈下橋?で香東川を渡る。

 8時10分、農村の新しい住宅地に一宮寺があった。クスの巨木がある。
 小雨のなか、交通量が多く歩道がない県道を歩き、栗林公園のそばを通る。

 まちなかは遍路マークがないから何度か道をまちがえる。10時ごろ中心街のコンビニで休憩。街歩きは面倒だ。
 頂上が平らで台形の屋島に向かって国道11号をひたすら歩く。

 11時10分、ようやく国道を離れて屋島のふもとにたどり着く。


 神社の参道のようにきちんと整備された坂道だ。干ばつでも枯れないという「加持水」や、「食べられない梨です」と大師にうそをついたら、本当に石のように固くて食べられなくなったと伝えられる「不喰梨」(くわずのなし)を見ながら登り、12時8分に屋島寺に着いた。正午までに22.1キロ歩いた。

 鑑真の弟子が開いたとされ、本尊の千手観音は平安前期につくられた。本堂は鎌倉末。いずれも重文だ。山門が二重になっている。内側の山門の仁王像は小さめで箱におさめられている。宝物殿もあるが入らなかった。
 近辺のタヌキの大将で弘法大師に協力したという「太三郎狸」の像はトトロに似ている。旧来の宗教と仏教の融合を示す逸話なのだろう。
 一宮寺で会った逆打ちのおじさんは「屋島の坂は危ないよ」と言い、納経所の男性も「今日は滑りやすいですよ。ふだんから滑りやすいけど」。よっぽどの坂なのだろうか。にわかには信じられないけど。

 12時35分発。展望台から、八栗寺のある五剣山や小豆島までの景色を楽しみ、危険だという下山道に入る。これまでの遍路道では横向きにならないと下れない坂道はなかった。ここには数カ所ある。でもその程度。京都近郊のハイキングコースでよくある程度の坂だ。石畳の方がよっぽど滑りやすい。13時4分に車道まで下った。

 ふもとの安徳天皇社は行宮があった場所という。
 川を渡って、屋島から見たら対岸の五剣山へ。昔は5つの峰ががあり、剣を天に突き刺すように見えたが、江戸時代の地震で東の一嶺が崩壊し、現在の姿になったそうだ。


 ふもとのケーブルカーの駅には13時45分に着いた。
 「手作りよもぎもちの店」をのぞいたら「まだあるよ」。1個120円で2個買った。餅はやわらかくて、きなこをまぶしてある。おいしい。
 そのちょっと上に「お遍路休憩所 仁庵」があり「お遍路さん休んでいってください」と声をかけてきたが、ほかのおばさんに「1時間つかまることもあるから、志度寺まで行くなら断ったらいいよ」と言われたいたから遠慮した。
 整備された道だが急坂だ。ケーブルの駅から30分ほどで大師像がある展望台に出た。

 なぜか鳥居をくぐると八栗寺に入る。背後の荒々しい巨大な岩山が寺の借景になっている。すごい場所に寺をつくったものだ。

 納経所の人が「藤井さんという方はいらっしゃいませんか?」と声を張り上げている。「私ですが」と言うと財布を忘れていた。
 14時40分発。
 車道の下りは小走りで下る。墓石や石材の業者が多いなあと思ったら五剣山は庵治石の産地だった。庵治石は、日本三大花崗岩で日本産御影石の最高峰という。旧牟礼町は「石の匠の里」だという。

 15時24分、塩竈神社。牟礼の海辺には昔塩田が広がっていた。祭神は「塩竈塩土老翁」(しおがましみつちのおじ)

 旧道をたどると原駅のあたりから重厚な民家や商家が増えてくる。15時53分、旧牟礼町からさぬき市(旧志度町)に入る。平賀源内の旧居と遺品館があるが、コロナで休館。ホルトノキは、平賀が和歌山の湯浅で発見して、オリーブの木と思いこんでもってきたという。ちょっと先の資料館も休館だった。平賀源内は傷害事件を起こして獄中で52歳で亡くなった。悲劇の天才だった。

 志度は重厚な建物が多い。旅館が何軒もあり、風月堂という和菓子屋もある。なぜこれほど栄えたのだろう。

 旧街道のどん詰まりに志度寺がある。その手前の寺には平賀源内の墓。志度寺は五重の塔があり、遠くからでもわかる。

 境内は広々していて、なぜか雑木がうっそうと生い茂っている。単に荒れているのか、意味があるのか。仁王門と金剛力士像、本堂が重文だという。

 旧道をちょっともどって旅館「いしのや」に入る。実はこの建物も重要文化財だった。

 手前の建物が明治で、僕が泊まった棟は昭和初期。8畳の部屋は床の間に掛け軸と生花がいけてある。光がやわらかくゆがむガラスは「割れたら入手できません。何枚かなくなりました。技術がない時代のものだからああいうガラスができたんでしょう」。職人の手作りが生み出したゆがみなのだ。
 きょうは37キロ。山2つも登ったのにそれほど疲れていない。不思議だ。
 カレイの煮付けはサンショウの風味がさわやか。料理はどれも繊細な味だった。(つづく

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