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遍路㊲40キロ超 本山寺~宇多津20200312

 タイムリミットの15日に終えるには1日平均35キロ歩く必要があることに昨夜気づいた。6時10分に出発する。
 宿に手ぬぐいを忘れてしまった。横峰寺では水筒をなくした。どちらもRゆかりのもの。命だって簡単に消えるんだから、物がなくなるのはしかたない。だれかが利用してくれたらよいけど。
 しばらく国道11号を歩く。あちこちため池だらけ。
 7時半、川沿いの土手の道に入ると、出勤途中らしいフィリピン人の女の子が自転車で通り過ぎる。土手の道で「贈る言葉」を歌って歩いていたら、曲がるべき場所を見過ごして遠回りしてしまった。

 山のふもとにたどりついてからが遠い。ペースの速いおじさん遍路と抜きつ抜かれつして、8時38分、弥谷寺の駐車場に着いたが「本堂まで540段」という表示に目をむいた。
 300段で大師堂。岩山にのめりこむお堂がいくつもあり、岩肌に磨崖仏が彫られている。岩屋寺に似ている。

 8時50分、本堂。ここまで12.6キロ。ふもとの水田と里を見渡せる。

 大師堂に納経所も併設されている。

 建物の奥の岩壁のくぼみ部分が「奥の院」になっている。岩山の寺はおもしろい。
 なぜ平野にこんな岩山ができるのか。Kの解説によると、高原が浸食されてできた地形で、西部劇に出てくる頂上の平らな丘や平原と同じだという。
 朝食がわりに「ハチミツレモン」を1本飲んで出発。竹がはびこる山道を15分たどって、高速道路をくぐる。
 ため池に次ぐため池。ひときわ大きな「大池」のわきにはラブホテルが。性と聖は近いものがあるんだな。

 もうひとつの山のふもとへ。10時10分、曼荼羅寺。お寺の隣にうどん屋がある。明るい境内で、納経所の前に桜が咲いている。

 春が訪れ、世界が華やいできた。
 1キロほど坂をのぼると出釈迦寺。

 眼下の平野が一望できる。ハッサクの無人販売があるが1袋が大きすぎる。寺の背後の山の中腹に寺らしき建物がある。奥の院だ。前回、「あそこまで行くか?」と言うと「パス!」とRは断言した。今日も長丁場だし、やめた。二度と行かないだろうな。ウグイスがしきりに鳴いて、何かを伝えようとしているようだ。

 しばらく下って振り返ると、お寺の奥の院のあった山はてんこ盛りのご飯みたい。不思議な形の山には必ず寺や神社がある。
 麦畑が多いのは、転作でうどん向けにつくりはじめたんだろうか。

 田んぼを歩き、次の小山のふもとへ。山と川の間に甲山寺がある。たぶん山の名前が甲山なのだろう。(11時20分、20.4キロ)

 11時半発。お寺の裏山は巨大な採石場になっていて、山肌が切り崩されている。寺の大切な裏山が、ドリフの舞台のように裏側ごっそりなくなろうとしている。

 善通寺に近づくとパン屋やカフェなどが増えてくる。11時50分「本家かたパン」という老舗の店があった。「かたパン」って何だろう? 買おうとしたら「売り切れ」だった。

 すぐに善通寺着。22.4キロ。抜き抜かれつのおじさん遍路はここに泊まるという。
 参道の左手と右手に寺の敷地が別れていて、左手に本堂、右手に大師堂である御影堂がある。本堂側には、重文の本堂(金堂)や国宝の五重の塔も。本堂の本尊は薬師如来。ひなびた古い建物のなかで、鈍い金色に輝く姿は神々しい。

 境内の大楠は樹齢千数百年で弘法大師の時代を知る生き証人という。東西24メートル、南北29メートルもある。
 御手洗水にはコロナ対策として「柄杓には口をつけないで」と書いてある。こんなのはじめて。

 仁王門をくぐって大師堂(御影堂)に参拝する。てんこもりのごはんのような2つの山が借景になっている。宗派のちがう「親鸞堂」もある。

 12時20分発。JRや高速をくぐり、農村の集落を縫うように歩き、13時15分に金倉寺に着いた。

 山門に入ると落葉樹の巨木がある。ケヤキだろうか。柱だけのシンプルな鐘楼が潔い。大判をかたどった絵馬がある。金倉(こんそう)寺って能登の金蔵にもあった。能登で「金倉米」と名付けたらどこかからクレームがついた、というのはここのことだったのかもしれない。
 裏手のコンビニで大型のたらこおにぎりを買った。きょうはじめての食べ物だ。

 農村集落をたどり、葛原正八幡宮へ。楠の巨木がある。裏の児童公園にも巨木がある。滑り台で遊ぶ子供たちを文字どおり見守っている。

 農村集落を4キロ歩き、多度津の中心に近づき、14時30分、道隆寺に着いた。32.4キロ。

 まもなく丸亀市に入る。海沿いには造船所があり、時折サイレンが鳴る。造船が盛んなのだろう。

 15時25分、丸亀の中心街にはアパホテルやドンキホーテ、全国チェーンの居酒屋、フィリピンパブなどがならぶ。商店街のアーケードも立派だが、シャッターが目立つ。
 土器川で街は終わり。橋を渡ると、県道沿いは郊外店だらけに。
 16時、ファミマでチョコレートパンを買って食べた。
 まもなく丸亀から宇多津に入る。宇多津駅近くは新しいマンションがいくつも建っている。

 立体交差をくぐってわき道に入る。10分ほど歩くと老舗のお菓子屋さんがあり、ちょっとだけ坂をのぼって16時35分、郷照寺に着いた。41.2キロ。

 境内からは瀬戸大橋が望める。真言宗と時宗の双方の寺だという。
 40人近い団体遍路が来た。うるさいけれど、腰の曲がったおばあちゃんが必死に石段をのぼる姿を見ると。ツアーも大事だなあと思う。年寄りが元気になるシステムには信仰の場が不可欠だ。
 寺から1キロ。川を渡ったところに「ビジネスホテルうたづ」があった。
 古びた3階建てで、エレベーターも自販機もない。4400円。部屋はまあ清潔だ。近くの食堂「熊ちゃん」で鶏のバター焼きどんぶりと大根サラダ、生ビールを食べたら1800円だった。
 きょうは8カ寺も訪ねた。歩行距離は最長の42.8キロ。(つづく

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