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遍路㉞接待小屋 湯之谷温泉~土居20200309

 土居までは28キロ。伊予三島まで行けば翌日は楽だけど38キロある。昼まで歩いてから考えよう。
 6時35分出発。すぐに「へんろ道中歴史研究所 湯之谷六角堂」という看板があり、古道具のようなものが集められている。

 さらに、高知の畑で見かけた畑の四輪車を2台見た。畑の畝の上にかぶせるようにして移動できるようになっている。市販品があるのか手作りなのか気になる。

 7時15分、加茂川をわたる。この川の上流に石鎚山に登るロープウェーがあり、曽我部さんが住んでいた旧石鎚村がある。振り返ると、岩壁を雪が彩る石鎚山がそびえている。
 堤防を上流にちょっとさかのぼった小学校には木造校舎が残っている。
 西条は「打ち抜き」で有名な水の都だ。美しい水が流れ、日常生活で野菜などを洗う用水路の風景が美しかった。だが今回は道を間違えて国道に出てしまった。

 7時50分、「打ち抜き水」をポンプで流す「ぽんぷ屋」という店がある。ポンプメーカーに聞けば、打ち抜き水の異なる側面が見えてくるかもしれない。水の味はやわらかい。カルキ臭さもない。
 高速道路のICを過ぎて新居浜市に入った。コンビニで休憩。
 きのう「自然な歩き方」と考えていたけど、単に速度が落ちるだけのような気がしてきた。テンポよく小刻みに歩いた方がよさそうだ。1000キロ近く歩いてるのに、歩き方の極意は見えない。

 すぐ「旧街道」に入る。廃業した布団店の壁面に「9条を守る」という看板がある。高知は9条の会が多かったが、愛媛の南から松山にかけてはほどんど見なかった。新居浜は工業地帯で労組が強く、革新市政だった時代もあるから、9条の会も盛んなのかな。

 10時、旧街道に突然「喜光地商店街」というアーケードが現れた。半分以上がシャッターだ。商店街のHPによると、主要道路の「金比羅街道」と、別子銅山の物資輸送道路「あかがねの道」が交差するところに位置して発展したという。銅山の繁栄と結びついていたのか。〓
 10時20分、国領川をわたる。新居浜市の南側には法皇山脈が屏風のようにそびえる。その向こうに別子銅山があった。尾根近くまでまちが形成されて数万人の人が働いていた。今は200人もいない。
 国道に合流したところにあるファミマで10分ほど休憩。ハタダの工場から右手の遍路道に入って、ふたたび国道と合流してからは30分間以上ひたすらのぼる。国道の峠が四国中央市(旧土居町)との境界だ。

 12時、小川のほとりに「弘法の館」と書かれた小屋がある。なかに入ると、テーブルにポンカンやミカンがあり、冷蔵庫にも「お飲みください」とジュースが入っている。飲み物をもらうのは悪いから、ポンカンをいただく。こうやって無償のお接待をする人があちこちにいるのが不思議でありがたい。数百年間で培われた遍路文化は、現代の拝金主義のなかでも失われなかった。
 がんばれば19キロ先の伊予三島まで行けるが、右足首の筋が痛くなってきた。横峰の疲れかもしれない。「35キロ歩ける人が25キロに抑えたら違うものが見えてくる」と言われたのを思いだし、8キロ先の土居の旅館を予約した。
 となるとあすの宿は雲辺寺の手前の「岡田屋」しかない。

 土居の宿泊が決まったから急ぐ必要はない。13時前、「三度栗大師」で休憩。弘法大師が1年に3度収穫できる栗を与えたという伝説がある。「木ノ川集会所」が隣にあり、ベンチがありがたい。

 すぐに国道11号をわたり、土居の中心へ。閉じた商店が多い。

 13時35分、延命寺に着く。別格二十霊場十二番札所。八十八には入っていないが、雰囲気がよいから立ち寄った。「土居のいざり松」は弘法大師が手植えしたとされ、東西30メートル、南北20メートルも広がっていたが、昭和43年に枯死した。その木の一部が今も残されている。
 大師堂と納経所はひとつの建物で、納経所の隣に大師像が安置されている。隣に人がいると読経できない。手を合わすだけにしたら「もう終わりですか。せめて南無大師遍照金剛ぐらい唱えなさいや」「本堂では般若心経だけ唱えたけど、近くに人がいるとへたくそなお経は恥ずかしいんでやめてるんです」「気持ちさえこもってれば下手でも気にしなくてよいのに」。ガラガラ声で気さくな坊さんだ。
 旅館は本来のチェックインは16時、お遍路さんには早くあがってもらっている、というがさすがにまだ早い。国道沿いの喫茶店で日替わり定食の牛丼700円を食べた。

 コープで「石鎚」の2合瓶を買って、「つたの家」にチェックインした。コロナでキャンセルが相次ぎ、団体はゼロ。個人の遍路も半分以下だという。
 きょうは27.8キロ。(つづく

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