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有福温泉(上)2010

有福温泉には通過を含めると2009年と10年、11年の3回訪れた。その間、大きな火災があり、せっかくの坂道の温泉街の風景が台無しになった。まずは2010年2月の記録から。
浜田市と江津市の境界にある水族館アクアスへ。入場料1500円は高いが、十分もとはとれる内容だ。

鯛やスズキ、ヒラメなどの身近な魚のいる水槽からはじまり、「これがバトウかぁ」などと食べたことのある魚と付き合わせていたが、そんな時間はないことはすぐにわかる。無数のイワシが逆時計回りにぐるぐる竜巻のようにまわりつづけ、クラゲがスライムのように浮遊し、タツノオトシゴ、イカ、ミズダコ……。巨大な水槽にはサメやエイが群れをなして泳いでいる。コバンザメをつけたサメの泳ぐ姿を、トンネル状の通路から見上げる。

「3時からペンギンのえさやりがあります」という放送につられて、アマゾンの魚やならんやらはすっ飛ばす。フンボルトペンギンはあたたかい海にいる……と説明されて、ペルーで見た光景の意味が理解できた。4,5種類のペンギンがいる。小さなペンギンはシシャモ、黄色いラインの入った大きな王様ペンギンはホッケを丸呑みする。

ペンギンの水槽を下からみると、ペンギンがまさに水の中を「飛んで」いるのがわかる。魚と同等以上のスピードで、右に左に飛ぶ。
アザラシの水中の生態も同様に見ることができる。シロイルカだけは撮影禁止だが、それ以外はストロボさえたかなければOKだ。

有福温泉方面へ。「有福小学校」は100年を超える歴史をもつ。コンクリートの校舎もレトロだし、古い木造校舎もある。有福小は浜田市だが、有福温泉小学校は江津だ。どちらも児童数が少なく、廃校の危機にあるという。

宿は「三階旅館」。木造三階建て一部タイル張り。玄関のロビーは松の木の床だ。季節の花やひな人形があちこちに飾ってある。
三隅の殿様の別荘として江戸時代に建てられ、明治になって旅館を創業した。昔は正式な名称があったが、三階建てが珍しかったたため、「三階旅館」と呼ばれるようになったという。
母娘でやっている。若女将は40歳代だろうか。富田靖子に似ている。学生時代の3年間をのぞけばずっとここにいるという。昔は川で泳ぎ、冬は兄が竹で手作りしたスキーで寺から滑り下ったとか。
有福温泉は昔は17軒あったが今は8軒に。
今や高級旅館となっている「ぬしや」も三階旅館のすぐ近くにあったが、温泉街の入口付近に移り、道路工事で立ち退きになって山の奥に移転した。
有福温泉は人一人通るのがやっとの狭い路地に旅館が建て込んでいるから、消防法上、建て替えはできない。ごまかしごまかし改築するしかない。消防法を守ったら、こんなおもしろい温泉街は成立しようがない。

外を散歩する。レイザルはうれしそう。「これすごいよ」「瓦がきれいなあ」「ここも旅館だったんやろか」……。

御前湯、かつては木造だったが、レトロ調の、おそらく昭和初期に流行したと思われる鉄筋建築になっている。300円。番台のおばちゃんはこたつに入っている。湯はおりがらみの酒のように微妙に白濁している。しかも掛け流し。肌がつるつるになる。

御前湯の2階には、かつての写真がある。芸者さんがずらりと並んでいる。御前湯は昭和3年には木造だった。

いま旅館組合や行政が協力して地域おこしの会社をつくり、御前湯の隣に個室風呂や足湯のある施設をつくっている。旅館も客の取り合いにならないよう、値段設定をわけているという。

夕食は「アレルギーなどはありませんか」などと事前に聞かれる。予約のとき「量は多くなくてよいから」と言うと年齢を聞かれた。そこまで考えて出すのだろう。境港のマツバガニ、ノドグロの煮付け、サケの粕鍋、刺身、蟹の釜飯、茶碗蒸し、葉わさび、煮付け……。どれも味がぴったり。「懐石」ならばこれに天ぷらがつくのだろうが、十分腹いっぱいになった。

毎週土曜日に20時半からやっているという神楽を見に行く。会場は公民館のような「演芸館」。入場料は500円。小さな子も含め30人ほどきている。子供らは出演者の子だ。笛を吹けるまでに10年かかるとか。「ここの子はお母さんのお腹のなかにいるときから聞いているから」。まさに神楽の英才教育だ。
菅原道真をあつかった「天神」と、エビスさんが鯛を釣るものと、「八岐大蛇」を上演する。斬り合いの迫力は下手な時代劇の殺陣より迫力がある。エビスさんがでてくると、事情を知っている子らは最前列に陣取る。飴をばらまくからだ。八岐大蛇は巨大なおろちが3匹も登場し、狭い舞台をうねうねとはいまわり、踊り狂う。操っている人間の存在がまったくわからないのがすごい。
1時間だが十分に楽しめた。
宿に帰ると、富田靖子の若女将が「私らの子供の頃はおろちが火を吹くくらいで、今みたいにきらびやかじゃなかった」と言う。時代とともに神楽も変化するのだ。

朝、3つの公衆浴場のうちもっとも小さな弥生湯へ。戸をあけると番台があり、おばあさんがコタツにあたっている。階段をおりた踊り場ほどのスペースが脱衣所で、浴槽も小さい。だれもいない。御前湯よりも透明な湯で、ぬるい。ゆっくり20分30分とつかっていられる。「地元の人間は1カ月600円だから、毎日来とる」という。

帰途、千丈渓を歩いたあと、江の川に出る。「川戸」という駅に車を置いて周囲を散歩する。

駅のすぐ前に「ヒーロー笛」の店があった。洋服屋だが、その一角を笛コーナーにしており、背広を着たおじいさんがいる。葬式に行く予定で喪服と黒いネクタイ姿だ。壁面には笛がたっぷり。7900円の篠笛と2000円の袋を買ってしまった。

川平の駅は、産直の野菜の集荷ステーションになっている。梅が咲いている。もう春なのだ。江の川の橋を歩いて渡ると、今年はじめてのウグイスの声が聞こえた。
(江津の町の川沿いの民家。いったいどうなってしまうのか)

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