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沼江大師から勝浦

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タバコ屋。塩が専売
だったころの名残
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勝浦町
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役場敷地内に神社と
忠魂碑というのは……

 久々の阿波遍路は鶴林寺のふもとの勝浦町の10キロほど手前から。
 鶴林寺のふもとには民宿が2軒ある。「かえで」という名がかわいいから、と予約の電話する。
「もしもし。予約お願いしたいんですけど……今日なんですけど」
「きょうは予約とは言わん……素泊まりでええな」
耳が遠いらしく話がかみあわぬままにガチャリ。
 徳島からバスで1人610円。勝浦川沿いにのぼる。上勝町方面にぬける県道だから、車はけっこう多い。
 前回歩いたコンビニの目の前がバス停だった。15時半に歩き始める。沿道にはすでにミカンやデコポンがたわわに実っている。
 紺の制服を着た学校帰りの小学生が「さようなら」と声をかけてくる。「こんにちは」ではなく「さよなら」というのが特徴的だ。ほかではふつう「こんにちは」とあいさつする。スペイン語だと「さよなら」だったな。
「知らない人についていくな、とか、あいさつはしろ、とか、子供は混乱するやろな。あ、でもその点、大阪のガキは一貫してるわ。あいさつなんかこれっぽっちもせえへん」
 勝浦町の中心部はけっこうにぎやかで商店やスーパーもある。たいていの遍路が泊まる3階建ての民宿のわきをとおる。浴衣を着たおかみさんとあいさつをかわす。
 おじいさんに呼び止められる。
「泊まるの?」
「この先の民宿に」
「あーあ。手前はいっぱいだったんか」
「そんなことないけど」
「かえでじゃ素泊まりだし、食事はできんじゃろ。80歳こえたばあちゃんがやってるから」
 まんが日本昔話の山姥の宿を想像してしまう。
「いったいどんな宿なんやろ?」
 鶴林寺への分岐をすぎ、1キロちょっと歩き、橋をわたると、川沿いに「かえで」がみえた。ちゃんとしたコンクリート造りの3階建て。思ったよりいいじゃないか。
「ごめんください」と叫ぶと、山姥ではなく、ふつうのおばちゃんだった。
「血圧高くて上まであがれんから、自分で風呂入れておくれ。あと、朝でるときは全部電気を切っておいてな。風呂はあがったらふたをしめて、扉はあけておいてちょうだい。朝は勝手にでていってね」
 ふつうの人でホッとした。近くには商店がない。久々にアルコールを1滴も飲まない夜に。1泊4200円。(つづく)

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