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有福温泉と川戸、江津、江の川

 日本でも有数の歴史をもつ有福温泉へ。
「有福小学校」は100年を超える歴史をもつ。コンクリートの校舎もレトロだし、古い木造校舎も残っている。

 有福小は浜田市だが、有福温泉小学校は江津だ。どちらも児童数が少なく、廃校の危機にあるという。

 

 泊まることにした宿は「三階旅館」。木造三階建て、一部、タイル張りの建物が建て増しされている。玄関のロビーは松の木の床で気持ちいい。季節の花やひな人形が飾ってある。トイレにも花がある。

 三隅の殿様の別荘として使われたといい、江戸時代に建てられた。明治になって旅館を創業した。昔は正式な名称があったが、当時三階建てが珍しかったたため、「三階旅館」が名前になってしまったという。
 おばあさんとその娘がやっている。娘は40歳代半ばだろうか。富田靖子に似ていて、気さくな人。ここで生まれ育ち、学生時代の3年以外はずっとここにいるという。昔は川で泳ぎ、冬は兄が竹で手作りしたスキーで寺から滑り下ったとか。

  有福温泉は昔は17軒あったが今は8軒に。
 今や高級旅館となっている「ぬしや」も三階旅館のすぐ近くにあったが、温泉街の入口付近に移り、道路工事で立ち退きになって山の奥にうつった。

 有福温泉は人一人通るのがやっとの狭い路地に旅館が建て込んでいるから、消防法上、建て替えはできない。ごまかしごまかし改築するしかない。消防法を守ったら、こんなおもしろい温泉街は成立しようがない。

 15時にチェックインして、「善太郎餅」を食べる。草餅だ。ヨモギの味がこくておいしい。それから外を散歩する。

 御前湯、かつては木造だったが、レトロ調の、おそらく昭和初期にはやったと思われる型式の鉄筋建築になっている。300円。番台にはおばちゃんが1人、こたつに入っている。

湯はおりがらみの酒のように微妙に白濁している。しかも掛け流し。肌がつるつるになる。
 御前湯の2階には、かつての写真がある。芸者さんがずらりと並んでいる。御前湯は昭和3年にはまだ木造だった。御前湯よりさらに上に「さくら湯」があり、その湯を「原爆……」に引いている。

 いま旅館組合とか行政とかが協力して地域おこしの会社をつくり、御前湯の隣に個室風呂やら足湯やらのある施設をつくっている。「ようやく動きだしましたぁ」とか。旅館も客の取り合いにならないよう、値段設定をわけるように協議しているという。

 夕食は「アレルギーなどはありませんか」などと事前に聞かれる。予約のとき、「量は多くなくてよいから」と言うと年齢を聞かれた。そこまで考えて出すのだろう。境港からもってきたマツバガニ、ノドグロの煮付け、サケの粕鍋、刺身、蟹の釜飯、茶碗蒸し、葉わさび、煮付け……。どれも味がぴったり。「懐石」にしたらこれに天ぷらなどがつくのだろうが、これだけで十分腹いっぱいになった。

 毎週土曜日に20時半からやっているという神楽を見に行く。会場は公民館のような「演芸館」。入場料は500円。小さな子も含め30人ほどきている。子供らは出演者の子供といい、小さいころから英才教育を受けているのだ。笛を吹けるようになるまで10年かかるとか「ここの子はお母さんのお腹のなかにいるときから聞いているから」と言う。
 菅原道真をあつかった「天神」と、エビスさんが鯛をつる場面、「八岐大蛇」の3題の一部を上演する。天神の斬り合いを表現する迫力はすごい。下手な時代劇の殺陣よりも迫力がある。

 エビスさんがでてくると、事情を知っている子供達は最前列に陣取る。ツボに入った飴をばらまくからだ。ユーモラスな動きは思わず笑ってしまう。まったく退屈しない。

 八岐大蛇は巨大なおろちが4匹も登場し、狭い舞台をうねうねとはいまわり、踊り狂う。操っている人間の存在がまったくわからないのがすごい。
 たった1時間だが十分に楽しめた。

 宿に帰ると、富田靖子似の若女将が
「私らの子供の頃はおろちが火を吹くくらいで、今みたいにきらびやかじゃなかった」と言う。
 時代とともに神楽も変化するのだ。

 翌朝。3つの公衆浴場のなかでもっとも小さな弥生湯へ。
 戸をあけると番台があり、おばあさんが1人、コタツに入っている。階段をおりた踊り場ほどのスペースが脱衣所で、浴槽も小さい。
でも人が少なくて静か。御前湯よりも透明な湯で、ぬるい。ゆっくり20分30分とつかっていられる。
「地元の人間は1カ月600円だから、毎日来とる」と、湯につかっていたおじさんは言う。

 千丈渓を歩く。つららからポタポタと水がたれ、水たまりには氷がはっている。

 でも若芽がふくらみ、枯れ木だらけの山もわずかに色づいているのように見える。

 1時間ほど川沿いをのぼって林道をおりてきた。

 車で江の川に出る。かつての桜江町の中心部らしい。「川戸」という駅に車を置いて周囲を散歩する。

 駅のすぐ前に「ヒーロー笛」の店があった。洋服屋だが、その一角を笛コーナーにしており、背広を着たおじいさんがいる。

 葬式に行くところだから、ということで喪服と黒いネクタイ姿だ。笛がたっぷり。楽しそう。7900円の篠笛と2000円の袋を買ってしまった。

 川平の駅は、産直の野菜の集荷ステーションになっている。「駅」の存在感の大きさよ。

 梅が咲いている。もう春が来ているのだ。

 江の川の橋を渡っていたら、今年はじめてのウグイスの声が聞こえた。

 江津駅前に車を置いて、市内をプラプラ散策する。

 

 このへんが最大の繁華街か?

 江の川、河口間近。

 タバコ屋が街のあちこちにあった時代も今は昔。

 

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