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夏の隠岐自転車紀行4 五箇村から西郷

ちょっと登って夢崎トンネルを越えて11時10分、福浦港に着く。弁天島が浮かび、その手前が海水浴場になっている。港のわきにようやく自販機が見つかり、アクエリアスビタミンガードを買って飲んだ。神社の水道水を飲むのを嫌がっていたレイザルは「しみるぅ。最高や」と喜んでいる。猫2匹、日陰でぐったりしている。

車道の新福浦トンネルはやめて、岬をぐるりとまわる小道をすすむ。これがいい道だった。「車両通行禁止」とあるが、旧道なのだから自転車の通れない山道ではあるまい。弁天島を左に見て岬の先端に近づくと、岩盤を手でほったようなトンネルが2つ3つ目に飛び込む(11時半)。

初代福浦トンネルは明治初期に手彫りでつくられた。2代目も明治後期に貫通した。
手彫りのトンネルをつくった人々の思いやムラの歴史を知りたいものだ。斜面が崩落して岩がごろごろ落ちている。一つ目のトンネルを抜けると「通行禁止」とあるが、かまわず突っ切る。まもなく五箇側に出た。入り江の向こうの草原には黒い牛が草をはんでいる。

五箇村に入れば食事ができる、と思って、田んぼが広がるなかを走る。11時50分ごろ、島後で唯一の温泉という五箇温泉にたどりつくが「準備中」。開店は14時だ。県道沿いの食堂も開いていない。合併後、2,3軒の食堂が廃業したという。
「なんですとぉ、ここにも合併の影響が。おれに昼飯を食えなくさせるなんて」とレイザルは怒っている。

自販機でペットボトルを補給する。しばらくは盆地のような平地をだらだらと走る。
南方にある五箇小学校・中学校を取り壊している。赤瓦のかわいい2階建ての木造校舎だ。まさに重機で壁をべりべりとひきはがしていた。これは学校耐震化の関係だろうか?
二宮金次郎とはちがう、シルクハットにマントを羽織ったユルキャラ系の体格の人の銅像がある。明治時代に西郷との間の道路整備に尽力した中西荘太郎氏を顕彰する像だという。もしかしたらあの手彫りのトンネルと関係があるのではなかろうか。


(おそらくムラ最大のsc)

国道485号に出ると上り坂になる。しだいにきつくなって、「もうだめ」とレイザルは自転車を押す。でもそれほど長くは続かない。五箇から西郷までは16キロだが、急な登りはせいぜい3キロだ。2つ目のトンネルからは下りに転じる。
山の上まで田んぼが多い。斜面もすべて田んぼ。こういう狭い棚田をつくってきた人々の意志はとても大事だ。隠岐の休耕田を管理している公社が廃止の瀬戸際にあるという。しっかり見たほうがよさそうだ、と思わせられる。

13時前に隠岐国分寺に到着。隣に牛突きの「隠岐ドーム」と売店がある。ここまで来たらあと少しだ。レイザルはアイスを食い、私は「一番絞り」をあおる。うまい、けど、まわる。国分寺の本殿は最近焼失した。後醍醐天皇が住んだ跡しか残っていない。拝観料は200円。

八尾川をまっすぐ下らず、途中で右手に別れて、山沿いをちょっとのぼって玉若酢神社へ。スギの巨木と茅葺きの山門が目をひく。隣の億岐家住宅も大きな屋敷だ。の宝物殿には全国でここしか残っていないという「駅鈴」が公開されている。
「駅鈴」をもっていると、馬や人足、舟などを「駅」で調達できたという。でもなんでここにだけそんなもんが残っているのだろう。

14時ごろには終点・西郷に到着する。旅館までの往復を含めて64キロ走った。
街なかのラーメン屋「味太郎」に入る。そう、兵庫県の夙川に住んでいたときよく通った店が「味太郎」で、そこの主人が隠岐好きだった。もしかして、と思って店に入り、「兵庫にもありますよね」と言うと、「あれはうちの妹なんです」と50歳ぐらいのおばさん。夙川の味太郎のご主人は昔は中華料理をやっていたが、ここでしばらくスープの作り方を習ったという。ちなみに西郷の味太郎のご主人は西宮に住んでいたことがあるという。


きょうの宿泊は布施のホテルサンライズ布施のバンガローだ。15時45分に迎えの車が来る。
昨日泳いだ塩浜までは平坦な道だが、その後は海を見下ろす断崖の上と、海沿いにある集落を激しく上下する。布施まで十数キロというが、これを自転車で走るのは西海岸のきょうのコースの比ではなかろう。しかも断崖だから集落も少ないからお茶などの補給も注意しないといけない。
サンライズは4人用バンガローにした。けっこう古い。クーラーもへたっているのかなかなか効かない。が、きょうみたいに暑い日のほうが珍しいのだろう。料金は2人で12000円。

バンガローの下の岩がごろごろの浜に降りて、30分ほどシュノーケルをつけて泳いだ。小さな魚がいっぱい。

食事は、たまにはバーベキューをしたいから、イワガキやアワビのついた5000円のセットと、通常の肉や魚の3000円のセットを頼んだ。。
18時から炭火をおこす。しばらくぶりだから火をおこすのが苦労した。

黒アワビ、イワガキ、レンコダイ、アジ、白いか……海産物が豊富。しかも肉もうまい。ビールを飲みながら食べていたらあっという間に腹いっぱいに。焼きながら食べるのは楽しい。別荘がほしくなるな。

値段は高めだが十分堪能できた。

【つづく】

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