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温泉津温泉と石見銀山1

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長命館の階段

  中国道を走り、日本海側に入ったとたんに赤いテカテカと光る屋根がめだつようになる。
鈍色の冬に、ちょっとでも明るく彩りを添えるためなのか、それとも単に粘土がこういう色なのか。
 JR温泉津駅から温泉街にむかうと、古い商家風の建物が増えてくる。
歩いたら楽しかろう、と思っているうちに、車のすれちがいも難しい狭い温泉街に。
 緑の山が両脇にせまり、谷間の部分に一列に家々が肩をよせあっている。
 ミンミンゼミとツクツクボウシとアブラゼミが夏の終わりを惜しむようにけたたましい声でないている。
昔ながらの「夏」を感じられるのは、クマゼミがいないからどうか、
 温泉街のなかほど、公衆浴場の「元湯」の真ん前が、きょうの宿の「長命館」だ。
木造3階建て。築100年という。心なしか廊下も傾いているような。
 階段の手すりは歴史を感じさせる。昔ながらの湯治の宿なのだろう。
 部屋は3階の道路に面している。

 

我が宿長命館
我が宿「長命館」

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夜の長命館

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温泉街を歩く。古びた湯治宿が多く、鍼灸の店があちこちにある。
 目の前の元湯(公衆浴場)は戦争直後くらいの建物だろうか。
番台のおばあさんが外に向かって座っている。懐かしい雰囲気だ。
千と千尋にでてきた温泉街はここのイメージじゃなかろうか。
温泉の建物は道後温泉に似ているが、街としての雰囲気はこっちにそっくりだ。
 石見銀山の世界遺産化を前に、伝建地区に指定されたという。
アート系の店がポツポツと出現し、ジャズが響く喫茶店ができ……
たぶんあと何年かしたら、湯治宿のひなびた雰囲気が後景にしりぞいて、内子のような若向きの「町並」にかわっていくのだろう。
 湯治と銀山という要素がくわわるぶん、内子よりもポテンシャルは高いし、観光客を集める町になっていくことだろう。
 軒下につってある灯籠に記された店の宣伝文句が楽しい。
 「ちょんまげからナウな髪型まで」という床屋には笑った。
 古い店先に「完全オマル」なんて商品が置いてあるとどきっとする。
 ぐるり歩いて5時半に宿にもどる。「5号室と7号室のお客様は広間へ……」と夕食の案内放送が流れる。
 1泊2食7000円ちょっとだから、食事は普通においしい。

 宿の正面の元湯温泉へ。浴槽が3つ。高温と低温と座浴用と。
3つあわせても4人程度しか入れない、ひなびた小さな風呂だ。当然シャワーもない。
湯温は高温は44度で、さすがに熱い。低温のほうで42度。これでも熱めだ。
 「きょうはお客さんが多いからか、ぬるいよ」と地元のおじいさん。
 地元の人ばかりなのがいい。夏休み中はこの風呂に12人も入ったという。
 観光客を呼ぶには浴槽が小さい。観光ブームが来たら大変なことになりそうだ。
 泉質は最高だ。有馬温泉のようなサビのにおいがして、赤みがかっている。
よくあたたまり、肌もしっとりしてくる。このへんのじいさんの見た目が若いのは温泉効果じゃなかろうか。
 このままの雰囲気で残ってほしいなあ。
 風呂をあがってから、「路庵」というダイニングバーのような店に入る。
古民家を、京都の設計事務所のアドバイスで改装したという。
 焼酎と酒がずらりと並んでいて、店員さんは若い女の子だ。
 地元の若林酒造の酒を2杯味わう。4本みせてくれたがどれも純米というのがいい。
蔵のこだわりなのか、この店のこだわりなのか。
 夏子の酒にでてくる米を使ったという「亀五郎」の原酒は、今シーズン最後の1杯だという。
辛口だけど、しっかり味がある。御代栄を辛口にしたような味だ。
 もう1杯、30歳代の杜氏の名前をとったという「竜馬」もためす。
甘めの酒かと思ったらじわりと酸味がある。これはおもしろい。
あまり酸味が強いと雑味になってしまうが、適度な酸味があると懐かしい味になる。

 夜の町をぶらぶら歩く。月が透明で明るい。星も多い。
白壁が白熱灯の明かりに黄色く染まり、飲み屋のネオンライトだけが鮮やかだ。
公衆浴場の鮮やかさは、「千と千尋」にでてくるよう。
 夕方、ぞろぞろと集まってきて、暗くなるとにぎわって、道には下駄の音が響いて……。
 いいなあ。(200609 つづく