土佐遍路 室戸へ2
生見浜から野根
午前4時半、あっちからもこっちからも鶏の声がする。
そのうちにカーテンを開け放した窓が明るくなってきた。
5時半には出発する。
柑橘の花があちこちに白い花を咲かせ、
甘いにおいがただよっている。
このへんは小夏が多い。次はブンタン、それにポンカンも。
窪川のあたりはポンカンだらけだった。
同じ高知でも地域によってずいぶんちがう。
海も、瀬戸内海とおなじ海とは思えない。
音からして雄々しい。
ザザザ、ドドドと押し寄せて白波がくだける音がたえず響いている。
鳥はツバメとウグイスの声の競演だ。
生見浜は早くもサーファーが大きな車でのりつけている。
レイザルはひまになると選挙の話になる。
「前回の選挙でTはベッタから4番だったから、
Tの下に4人いたんだよね。その人たち今回はどうなったんやろ」
5時40分、室戸の町まで40キロ、寺まで35キロの看板。
トンネルで抜けると、午前6時に野根という大きな集落に入る。
戦没者の忠魂碑?のわきが東洋大師である。
山門の両脇に巨大な日の丸が掲げられている。
「こらあかんで」
「スルーするか」
ってことで参拝はやめる。
旧道沿いには古い商家のような家がならぶ。
「野根まんじゅう」は「天皇陛下御用達」だそうな。
薄皮でおいしそうだが、まだ店はあいてない。
6時25分、集落のはずれの野根大橋をわたる。
石造りの立派な橋で、両端には門のように灯籠がたっている。
昭和6年3月建立という。
「昭和6年ってさ、けっこう豊かだったんちゃうか。
うちのじいちゃんも、はぶりがよかったみたいだし。
さっきの昭和16年にできた神社なんかは
イヨイヨという事態になって作ったって感じだったけど。
なんとなくそう思わへん?」
そうかなあ……